• ep38-5「生きる はたらく つくる」「ミナを着て旅に出よう」(ミナ ペルホネン/皆川明さん)-「こぼれ話」/変化を恐れる心-
    2024/07/18

    38冊目も5回目。今回はこぼれ話の回です。皆さまのご期待に添えるよう、こぼれにこぼれてみました。

    そもそも今回粟野さんが扱った2冊ですが、皆川明さんの自伝的な内容で、随所から自然体な皆川さんを感じられたそうです。

    特に、これまでつくり上げてきたテキスタイルには識別番号やコードネームではなく名前を付けている、というエピソードに感銘。データや機能ではなく、名前だと物語を感じやすいよね、と二人で盛り上がっていると、ふと星野が最近の取材に関する違和感をポロリとこぼします。

    客観的な数値データや比較による相対価値などを引き出そうとする取材スタイルは、もしかすると相手の本当に話したいことを阻害しているかもしれない、という気づきから、今取材スタイルを変える訓練中だという内容でした。

    もしかすると皆川さんの初期もそんな状況だったのかもしれないと想いを馳せ、そんな中でも流されずに自分のモードを保ち続けた皆川さんへの尊敬がまた高まっていきます。

    今の時代に100年企業を目指すなら、どのくらいの期間でリーダーを譲っていくべきかという話題では、権力の座に長くいることの弊害、リーダー持ち回り制アイデア、最近の政治家の偏屈っぷりについてまで話題が飛躍。

    最後に、粟野さんは今回「37日間の野外教育合宿」によく参加を決めたよね、と言う話をしました。参加してみて、家族や仕事も回ることを実感したそう。色々と言い訳をつけてはいたけど、結局自分が変わることを恐れていただけなんじゃないか、と気づいたと話してくれました。収入や肩書、他者による成功の定義などにとらわれない生き方ができるようになると、もっと楽しい人生になるのかもしれない、と。

    今回も、お聞きいただきありがとうございました!こぼれ話でたくさん話せるときは、扱った本にたくさんのインスピレーションをもらったときだと思っています。

    次回もお楽しみに!

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    19 分
  • ep38-4「生きる はたらく つくる」「ミナを着て旅に出よう」(ミナ ペルホネン/皆川明さん)-「陸上競技」/周囲を気にせず、自分と向き合う
    2024/07/11

    皆川明さんは東京都大田区生まれ、育ったのは横浜綱島。奇しくも粟野さんも住まれていた街だそう。あの街の風景からミナペルホネンが育つのか、と意外な気持ちにもなったみたいです。

    今回のテーマは「陸上競技」。皆川さんが続けていた陸上競技を観点としてお話しています。高校生の頃は陸上競技に集中。将来もその道を思い描かれていた様子。ですが、結局怪我をした結果、今の道に出会っています。

    当時、陸上競技に没頭している時期の皆川さんの姿勢は、ライバルや順位を一切気にせず、自分の理想に向けてひたすら自分の走りに向き合うというもの。当時から自分の中の大切なものにのみ意識を向ける皆川さんに、粟野さんは共感と同時に感動を覚えたそうです。

    また、具体的に将来のイメージを描く皆川さんの周囲には、自然とサポートしてくれる人が現れてきたそうで、そこも皆川さんの自然な姿勢に関係がありそうで興味深いところです。

    次回は、こぼれ話をお届けします。

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    13 分
  • ep38-3「生きる はたらく つくる」「ミナを着て旅に出よう」(ミナ ペルホネン/皆川明さん)-「スタイル」/開かれたアワノ-
    2024/07/04

    100年経っても愛され続けるためには、流行を気にしていてはいけない。デザイン単体ではなく、スタイルとして人々に認知され、求められるものをつくっていきたいという皆川さん。そうした想いからテキスタイルにもすべて名前を付けているそうです。

    創業期、2年間無給でもついてきてくれたデザイナーの方の言葉で「皆川さんの作る服は着る喜びや精神の充実を大事にしていることが伝わった」というものがあります。当時のアパレルブランドの主眼はいかに格好よく見せるか、に置かれていたそうですから、そもそも着眼点から違ったのかもしれません。

    余談ですが、星野の4歳手前の息子が気に入ってきているTシャツの一つが、デンマーク製のものなんです(フィンランドではないのですが)。つくりの良さ、着心地の良さを、こどもながら(だから?)に受け取って選んでいるのかもしれません。

    テキスタイルのパターンだけでなく、生地の質、縫製技術、セールは絶対にしない方針など、変えないものを明確にしてそれを何十年という単位で保ち続けていることから、「スタイル」が際立ち、人々が惹かれていく。「ミナペルホネンは、他社の成功法則などには一切関係なく、自分たちの道を行く」と明言もしています。つよいメッセージですが、それを自然体で伝えているところにも魅力を感じます。

    次回は、3つ目のキーワード「陸上選手」について、お話していきます。

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    12 分
  • ep38-2「生きる はたらく つくる」「ミナを着て旅に出よう」(ミナ ペルホネン/皆川明さん)-「せめて100年つづくように」「自然体」-
    2024/07/02

    今回はキーワード「せめて100年つづくように」を軸に、お話をしてまいります。そもそも皆川さんがこの取り組みを始める際にA4用紙に書いて張ったという言葉です。我々にとって100年という単位はとても長い期間に見えますが、そこに「せめて」とつけている皆川さん。次々と新しい流行をつくっては消費していく業界へのアンチテーゼだったのでしょうか。

    初期は「ミナ(私)」というブランド名でTシャツをつくるところからスタートし、営業も展示会の運営もすべてご自身で担当し、とは言え売り上げは一向に上がらず。八王子の魚市場で働きながらの立ち上げ時期だったそうです。自分の車に洋服を積んで東北や大阪に行っての飛び込み営業も、成果は上がらず。ヨーロッパ遠征にも行かれています。

    目に見える成果が出ない中でもコツコツと続けられるモチベーションの源泉が気になった星野。粟野さんの話してくれる中からこれは営業ではなく、布教なのではないかと感じました。市場の動向やお客様のニーズに一切とらわれず、自分たちが信じた道を自分たちの時間軸で一歩ずつ進んでいく。その姿勢におそらく皆さん惹かれていくのでしょう。

    また、100年という単位を本気で目指すと、自分一人だけでは実現できない。想いを他の人にタスキをつなぐように渡していかないといけません。しかも、受け渡しの期間にスピードを落とすことなく。そう考え「いつか自分は閉じなきゃいけない」と皆川さんは書いています。ミナペルホネンの代表をおり、次の世代へと受け継いでいく。代表だけでなく、縫製を依頼している先の職人さんや会社などのことも考えながら。

    縫製のプロが、ミナペルホネンの服をほどき解説していくYoutubeを粟野さんが見たようです。そこでも、縫製技術が絶賛されていたとのこと。あるべき姿を見据え、そのために必要な要素を仲間とともにつくりあげていく。一見志を追い続ける男くさい印象を持ちますが、粟野さんが皆川さんに感じた印象は「自然体」だったそうです。だからこそ、女性からの支持を受け続けているのかもしれません。

    次回は、2つ目のキーワード「スタイル」について、お話していきます。

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    14 分
  • ep38-1「生きる はたらく つくる」「ミナを着て旅に出よう」(ミナ ペルホネン/皆川明さん)-37日間の長野修行、村上春樹さんと皆川明さんのお顔-
    2024/06/14

    37日間の長野県滞在から、1週間前に帰ってこられた粟野さん。アウトドア教育の指導者になるための研修プログラムに参加してきたのです。雪山登山やロッククライミングの前後、早朝と夜にはリモートで仕事もこなしつつの37日間は、なかなかの経験だったようです。

    さて、そんな期間を経ての38冊目は、ミナ ペルホネンの皆川明さんの2冊。

    「生きる はたらく つくる」

    「ミナを着て旅に出よう」


    研修の地に向かう新幹線の中で聞いていたラジオに皆川さんが出演されていたこと、また粟野さんの奥さまが図書館から借りてきていた本に思わず付箋を100個ほどつけてしまったことがきっかけでの選書となりました。

    今回も3つのキーワードをもとにお話をしていきます。

    • せめて100年つづくように
    • スタイル
    • 陸上選手

    余談ですが、発生に悩む我々はこの収録後に、ボイストレーニングを受ける予定。

    39冊目からは少しいい声になっているかもしれません。

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    12 分
  • ep37-5「ふつうの相談」(東畑開人さん)-Podcastもふつうの相談、ふつうの枠を広げる、「野良〇〇」-
    2024/06/06

    4回にわたり「ふつうの相談」を扱ってきましたが、最終回はこぼれ話の回です。


    K-POPアイドルの話・継続視聴率の話・日本ではPodcastは稼げない話・Lobsterr letterの話…と、冒頭から関係のない話題が止まりませんが、「ふつうの相談」に関連したこぼれ話は大体8分前後からです(毎回関係ない話から始めちゃってごめんなさい)。


    我々がPodcastを介して続けているやり取りも、「ふつうの相談」の一種なのだろうなと思っています。星野としては、粟野さんに預かってもらっている。聞いてくれている人にも預かってもらっている。そんな心持になっております。いつもありがとうございます!


    粟野さんは先日、青山ブックセンターでのイベント「朱喜哲×渡邉康太郎『人類の会話のための哲学』刊行イベント 」に参加してきたそうです。

    その際にお話されていたお二人のお話がぴったりとかみ合ってはいない感覚を抱かれたようです。その経験から「強い文脈・弱い文脈」または「小さなフォント」といった言葉の捉え方も人によって違うのかもしれないという認識を持ったとのこと。

    たとえば「強い文脈」という言葉を、粟野さんは社会の中で主流とされている考え方として捉え、星野は「発信者の意図」として捉えていることがわかりました。


    もう一つ、こぼれ話として「ふつうの枠を広げる」というテーマについても二人で話しています。一人ひとりが枠を広げると、もっと気軽にお互いを助け合える社会が広がるだろうと思うのです。

    星野が野良コーチ、野良カウンセラーを目指すように、「野良×〇〇」がもっと増えると面白そうだな、と。

    「ふつう」はビジネスにはなりにくいのかもしれませんが、それをきっかけにして、関りを持ち続けていくこともできるのは、と思います。


    今回でホシノリョウタの読書の時間も終了。

    次回からはまた通常通りアワノトモキの読書の時間に戻ります。

    お楽しみに!

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    21 分
  • ep37-4「ふつうの相談」(東畑開人さん)-小さなフォント、弱い文脈、藤井風-
    2024/05/30

    今回は3つ目のキーワード「横道の意義とは」を軸にお話ししていきます。

    星野としては、リスナーの方々もこの内容には興味を持つ人が多いのではないかと思っておりますが、どうでしょうか。


    扱っている「ふつうの相談」(東畑開人さん)ですが、この本の構成、少し変わっているんです。

    地の文章とは体裁を変えた「小さなフォント」が織り交ぜられています。


    本論が展開される地の文章と、著者の東畑さんがおそらく思いついたであろう横道話が「小さなフォント」でつづられ、ページが進んでいきます。


    星野は主にこの「小さなフォント」で書かれた内容にズキュンズキュンと撃ち抜かれていきました。


    実はこの構成、中井久夫さんの「治療文化論」をオマージュして意図的につくられていたことが、本の最後に東畑さんから語られます。


    この本の中でも語られている「臨床を日常的な文脈、人間的な文脈で捉える観点」が、こういう構成を生み出している、と思いました。


    読書の時間でも扱ったTakram渡邉康太郎さんの「コンテクストデザイン」で触れられていた、「弱い文脈」も思い出されました。


    強さや正しさを備えた本論も、矛盾や曖昧さを「小さなフォント」で添えながら伝えることで、きっと届く先は広く大きくなる。そんなことも感じたわけです。



    ところで。

    粟野さんが藤井風を聞いていることを知って意外な星野でした。よく知っていると思っている人にも、まだまだ見えていない面はたくさんあるんでしょうね。


    みなさま、ともに周りの人を掘り続けましょう。

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    15 分
  • ep37-3「ふつうの相談」(東畑開人さん)-星野は預かりたい、名もなき野良相談役
    2024/05/23

    37冊目「ふつうの相談」(東畑開人さん)について語る3回目。

    今回はキーワード「星野は預かりたい」について話していきます。


    書籍「ふつうの相談」には、こんなことが書かれていました。


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    (以下、趣旨まとめ)

    現在の心のケア業界では、苦悩する人たちの状況に合わせた療法が実施されているとは言い難い。

    その要因は、1人の臨床家が2つの療法のスペシャリストになる労力が大きいことと、臨床家のキャパシティを越えた相談ニーズがあることが挙げられる。

    だが、ケアに関わる人の大きな社会的役割の一つは、適した療法を提供できなかったとしても、まず自分が相談者の悩みを預かることである。

    (以上)

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    心のケア業界の現状はさておき(!)、星野個人としてこの役割に関する表現に響いてしまったのでした。


    ふつうの相談として親身にお話できる方に巡り合いづらい世の中。

    たとえ付け焼刃だったとしても自分の悩みを預かってくれる人の存在のありがたさ。

    これを相談する側として切実に感じてきたからこそ、自分もそういう存在になりたいのでは、と思うのです。


    もちろん専門家が必要な状況があるのは承知の上で、とは言えそこへのエスカレーションまでできたらいいなぁと。

    一時避難所のようなイメージですね。


    東畑さんの本には、こうしたビビビポイントがそこら中にちりばめられている印象です。

    本の趣旨ドンピシャのお話ではないのですが、こんな観点からもおすすめの本でございました。


    社会の流れには逆行するのかもしれませんが、個人ができることをもっと復活させて相互扶助コミュニティをもう一度復権させたいな、と考えております。


    ふつうの相談も承っていく名もなき野良相談役として、熟練度を上げていきたいと思う所存です。

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    24 分