• ボイスドラマ「行人橋」

  • 2025/02/14
  • 再生時間: 12 分
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ボイスドラマ「行人橋」

  • サマリー

  • 『行人橋』は、年齢に抗いながらも声優として生きる女性の、心の変化を描いた作品です。時を重ねることは、時に恐怖や不安を伴います。とくに声の仕事をする彼女にとって、「若さ」と「実力」は切り離せない問題でした。しかし、彼女の願いが叶えられたとき、その「奇跡」は果たして幸せなものだったのでしょうか?高山市に実在する行人橋を舞台に繰り広げられるこの物語は、人生の価値とは何か、自分らしさとは何かを問いかけます。そして、最後に彼女が選んだ答えとは——。本作はPodcast番組『Hit’s Me Up!』の公式サイトをはじめ、Spotify、Amazon、Appleなど各種Podcastプラットフォームでもお聴きいただけます。声の演技だからこそ伝わる「想い」を、ぜひ耳でも体験してください(CV:桑木栄美里)【ストーリー】■SE/オフィスのガヤ〜扉を激しく開ける音「ちょっと、マネージャー!なんなの?この役は?42歳の母親役って?」「冗談じゃない。私、まだ30代よ。39歳なのよ」「なに言ってるの!39歳と40歳じゃあ、雲泥の差よ。天と地ほど違うわ」「年相応の役はとってこれないの?」「だから勇者と恋に落ちるヒロインとか後宮の美しいお妃とかさ。20代後半から30代くらいの、セクシーな主役級キャラってあるでしょ」「ああもう〜、いいわ、直接プロデューサーに電話するから!」私はキャリア20年のベテラン声優。いやあね、ベテランっていうと老け感があるじゃない、せめて中堅と呼んでほしいわ。まだまだ主役はれるし、声の艶は20年前よりハリがあるんだから。「もしもし、あ、プロデューサー?ちょっと相談なんだけどさ」結果は変わらなかった。そう、私は39歳。しかも明日は誕生日。もうあと何時間かで、口に出すのもおぞましい40歳がやってくる。そうしたら今以上に仕事のオファーやオーディションはなくなり、先細っていく。ああ!いやよ、そんなの!若い子たちになんて絶対負けたくない!■SE/街角の雑踏〜ハイヒールの足音むしゃくしゃした気分で行神橋(ぎょうじんばし)を渡って、宮川沿いを歩く。この橋もできたてのときはヒノキのいい香りがしたんだけどな・・・あ〜だめだめ。すぐに年齢のことに結びつけちゃう。そもそも、どんなに売れても私が高山から出ないのは、人気のバロメーター。高山から東京のスタジオへ呼んででも出演してほしい声優、という証なんだ。そんなの未来永劫変わらないと思ってたのに。あら?あれなに?あんなところに社なんてあったかしら?埃をかぶった小さな祠。妙に気になって境内に足を踏み入れる。なかに入ったとたん、なぜだか急に腹が立ってきた。■SE/神社のガラガラを鳴らす音「神様お願い!私、もうこれ以上歳はとりたくない!不老不死になりたい!いいえ、若返りたい!どうか願いを叶えてください!神様!いえ、願いを叶えてくれるならたとえ悪魔でも構わない!」その刹那。突風が私の体を包み込み、空へ抜けていった。悪魔は人間の心に生まれた隙を見逃さない、って言うけど・・・その日の夜。夢を見た。姿かたちはまったく見えない何者かが私に告げている。『願いを叶えてやろう』『お前はいまから若返っていく』『40年経ったら、お前の魂を渡してもらおう』40年後、ってことは80歳か。そこまでいったらもう悔いはないわ。引退すればいい。夢だとわかっていながら頭の中で計算していた。■SE/朝の小鳥のさえずりその日を境に私の体は変わっていった。「なんか、最近肌艶がよくなってない?」「声も前よりすっごく若くなったみたい」「どんなメンテしてるの?教えてよ」アフレコ中のスタジオでみなが口にした。ディレクターもオペレーターも、同期のベテラン声優たちも。プロデューサーは、有名なアニメの有名なセクシーキャラのCVに私を抜擢した。キャラ設定は、33歳。いいんじゃない。最初は単純に喜んでいた。■SE/スタジオのガヤ「ハイ、オッケー!」「おつかれさまでした」10年後。本来なら50歳の年齢だが、私は30歳の体になっていた。TVやニコ生などで呼ばれるフレーズは「時を超えるオンナ」。TVアニメでも映画でも引っ張りだこになったけど、周...
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あらすじ・解説

『行人橋』は、年齢に抗いながらも声優として生きる女性の、心の変化を描いた作品です。時を重ねることは、時に恐怖や不安を伴います。とくに声の仕事をする彼女にとって、「若さ」と「実力」は切り離せない問題でした。しかし、彼女の願いが叶えられたとき、その「奇跡」は果たして幸せなものだったのでしょうか?高山市に実在する行人橋を舞台に繰り広げられるこの物語は、人生の価値とは何か、自分らしさとは何かを問いかけます。そして、最後に彼女が選んだ答えとは——。本作はPodcast番組『Hit’s Me Up!』の公式サイトをはじめ、Spotify、Amazon、Appleなど各種Podcastプラットフォームでもお聴きいただけます。声の演技だからこそ伝わる「想い」を、ぜひ耳でも体験してください(CV:桑木栄美里)【ストーリー】■SE/オフィスのガヤ〜扉を激しく開ける音「ちょっと、マネージャー!なんなの?この役は?42歳の母親役って?」「冗談じゃない。私、まだ30代よ。39歳なのよ」「なに言ってるの!39歳と40歳じゃあ、雲泥の差よ。天と地ほど違うわ」「年相応の役はとってこれないの?」「だから勇者と恋に落ちるヒロインとか後宮の美しいお妃とかさ。20代後半から30代くらいの、セクシーな主役級キャラってあるでしょ」「ああもう〜、いいわ、直接プロデューサーに電話するから!」私はキャリア20年のベテラン声優。いやあね、ベテランっていうと老け感があるじゃない、せめて中堅と呼んでほしいわ。まだまだ主役はれるし、声の艶は20年前よりハリがあるんだから。「もしもし、あ、プロデューサー?ちょっと相談なんだけどさ」結果は変わらなかった。そう、私は39歳。しかも明日は誕生日。もうあと何時間かで、口に出すのもおぞましい40歳がやってくる。そうしたら今以上に仕事のオファーやオーディションはなくなり、先細っていく。ああ!いやよ、そんなの!若い子たちになんて絶対負けたくない!■SE/街角の雑踏〜ハイヒールの足音むしゃくしゃした気分で行神橋(ぎょうじんばし)を渡って、宮川沿いを歩く。この橋もできたてのときはヒノキのいい香りがしたんだけどな・・・あ〜だめだめ。すぐに年齢のことに結びつけちゃう。そもそも、どんなに売れても私が高山から出ないのは、人気のバロメーター。高山から東京のスタジオへ呼んででも出演してほしい声優、という証なんだ。そんなの未来永劫変わらないと思ってたのに。あら?あれなに?あんなところに社なんてあったかしら?埃をかぶった小さな祠。妙に気になって境内に足を踏み入れる。なかに入ったとたん、なぜだか急に腹が立ってきた。■SE/神社のガラガラを鳴らす音「神様お願い!私、もうこれ以上歳はとりたくない!不老不死になりたい!いいえ、若返りたい!どうか願いを叶えてください!神様!いえ、願いを叶えてくれるならたとえ悪魔でも構わない!」その刹那。突風が私の体を包み込み、空へ抜けていった。悪魔は人間の心に生まれた隙を見逃さない、って言うけど・・・その日の夜。夢を見た。姿かたちはまったく見えない何者かが私に告げている。『願いを叶えてやろう』『お前はいまから若返っていく』『40年経ったら、お前の魂を渡してもらおう』40年後、ってことは80歳か。そこまでいったらもう悔いはないわ。引退すればいい。夢だとわかっていながら頭の中で計算していた。■SE/朝の小鳥のさえずりその日を境に私の体は変わっていった。「なんか、最近肌艶がよくなってない?」「声も前よりすっごく若くなったみたい」「どんなメンテしてるの?教えてよ」アフレコ中のスタジオでみなが口にした。ディレクターもオペレーターも、同期のベテラン声優たちも。プロデューサーは、有名なアニメの有名なセクシーキャラのCVに私を抜擢した。キャラ設定は、33歳。いいんじゃない。最初は単純に喜んでいた。■SE/スタジオのガヤ「ハイ、オッケー!」「おつかれさまでした」10年後。本来なら50歳の年齢だが、私は30歳の体になっていた。TVやニコ生などで呼ばれるフレーズは「時を超えるオンナ」。TVアニメでも映画でも引っ張りだこになったけど、周...

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