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芥川龍之介全集 二
- ナレーター: パンローリング
- 再生時間: 10 時間 49 分
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あらすじ・解説
日本の文学史でも、指折りの短編小説の名手である芥川龍之介。
その名を冠する「芥川龍之介賞」(芥川賞)は、今日に至るまで権威のある文学賞として社会的関心を集めています。
主に短編小説に多くの傑作を残し、その作品は平易な文体ながらも、その秀逸な言葉選びや、深くまで切り込んだ心理描写の生々しさも相俟って、読み手を瞬く間に作品世界に引き込んでくれます。それも一因となって非常に人気が高い作家であり、没後には、何度も全集が刊行されて広く愛読されています。 この度、芥川龍之介全集が、満を持してオーディオブックに登場です。代表作以外にも隠れた傑作が数多く収録されています。通勤や移動の合間にも、文学史上に輝く綺羅星のような作品に触れられる当オーディオブックは、きっと感性にも豊かに響く、意義深い時間を届けてくれることでしょう。
<あらすじ>
「鼻」
禅智内供の鼻は長さが五六寸あり、上唇の上から顋の下まで下っていた。
そして内供は、人に笑われ、馬鹿にされるこの鼻のことを非常に気にしていた。絶えず他人の鼻を気にしたり、内典外典の中に、自分と同じような鼻のある人物を見出して、せめても幾分の心やりにしようとさえ思った事がある。一方ではまた、積極的に鼻の短くなる方法を試みたが、どれも上手くいくことは無かったのである。
所がある年の秋、内供の用を兼ねて、京へ上った弟子の僧が、知己の医者から長い鼻を短くする法を教わって来た。内供は気にしない素振りをしながらも、内心気になって仕方なく、弟子の手を借りて実行に移すのであったが……
「黒衣聖母」
田代君がテーブルに乗せたのは、一体の麻利耶観音だった。
麻利耶観音というのはキリスト教禁教の時代に、聖母マリアの代わりに礼拝した観音像だった。ほとんどは白磁の観音像であったが、田代君の持って来たそれは、顔以外は黒檀を刻んだ、いわば黒衣聖母とも呼ぶべき姿のものだった。しかもそれは、妙な伝説が付随しているのだという。
「これは禍を転じて福とする代りに、福を転じて禍とする、縁起の悪い聖母だと云う事ですよ」
そして、田代君はこの麻利耶観音にまつわる不思議な物語を話し出すのだった……
<収録作品>
鼻
猿蟹合戦
アグニの神
春
手巾
舞踏会
或恋愛小説
温泉だより
黄粱夢
保吉の手帳から
英雄の器
野呂松人形
沼地
捨児
白
MENSURA ZOILI
海のほとり
煙管
年末の一日
煙草と悪魔
庭
片恋
一塊の土
たね子の憂鬱
じゅりあの・吉助
黒衣聖母
仙人
尾生の信
運
往生絵巻
女体
誘惑
芥川龍之介
大正期の小説家。1892年東京都生まれ。東大卒。乳児期から母方の実家で育てられた。東京帝国大学在学中の1916年に第四次「新思潮」創刊号に発表した「鼻」が夏目漱石に絶賛され文壇にデビューする。初期の古典を材料にした「羅生門」「芋粥」「地獄変」などの名作を経て、「点鬼簿」「歯車」など自己の周辺にテーマを得た作品に移行。様々なトラブルで心身とも衰弱し、1927年に自殺して36歳の若さでこの世を去る。没後、親友である菊池寛によって、芥川賞が創設された。
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ある日の暮方の事である。一人の下人が、羅生門の下で雨が止むのを待っていた。彼は四五日前に主人に暇を出されていた。雨が止んだところで、彼に行き先は無かったのである。羅生門の楼の内には、噂に聞いた通り、幾つかの死骸が無造作に棄てられていたが、その中に蹲っている人間を見た。檜皮色の着物を着た、背の低い、痩やせた、白髪頭の、猿のような老婆であった。その老婆は、女性の死骸の首に両手をかけると、丁度、猿の親が猿の子の虱をとるように、その長い髪の毛を一本ずつ抜きはじめた。その様を見た下人は、悪を憎む心に駆られ、太刀に手をかけながら、大股に老婆の前へ歩みよった。老婆は、一目下人を見ると、まるで弩にでも弾かれたように、飛び上った。下人は、老婆が死骸につまずきながら、慌てふためいて逃げようとする行手を塞いで、こう罵った。
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