エピソード

  • 嵐の前の静けさか?
    2024/12/17
    各国中央銀行の動きは2024年末まで予想通りになると見られるにもかかわらず、2025年は波乱が予想される理由を、弊社グローバル・チーフ・エコノミストが御説明します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は、弊社グローバル・チーフ・エコノミストのセス・カーペンターが、年末の各国中央銀行の動向が、驚くほどにかなりの確実性を伴って予想される点についてお話しします。このエピソードは12月17日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。年初からこれまでの期間とは異なり、各国中央銀行の年内の会合に関する予想は、確実性がはるかに高いようです。恐らく単なる嵐の前の静けさに過ぎないのでしょうが、今のところ、年末年始の休暇まで、穏やかな中央銀行の動向を享受しましょう。先週木曜日に欧州中銀は、弊社予想および市場の予想とぴったり一致する25ベーシスポイントの利下げを実施しました。同じように、経緯は全く異なるとは言え、FRBは今週25ベーシスポイントの利下げを実施すると弊社は予想しており、市場の予想もこれと同じと見られます。イングランド銀行と日銀は、いわば締め切り済み勘定になっていると弊社は考えています。つまり、新年まで新たな動きはないと見られます。欧州中銀は、利下げのペースを速めるべきか否かが議論される中、先週、25ベーシスポイントの利下げを実施しました。ディスインフレに関する疑いのほとんどが払拭され、意思決定のプロセスでは経済成長の下振れリスクが大きく浮上しました。制限的な金融政策の必要性が一段と薄れるようになり、欧州中銀のラガルド総裁の声明は、理事会で話し合った、政策金利が中立水準に到達するまで金融緩和を続けるとのスタンスを反映している模様です。問題は、次に何が起こるかです。欧州中銀は、中立水準まで利下げを行い、政策金利を1%に引き下げる必要があると判断すると弊社は見ています。これと好対照をなすのがFRBです。FRBにとって、成長に関して現在も残る懸念はほとんどありませんが、ディスインフレのペースに対する疑問は増大しています。最近の雇用データを例にとると、明らかにリセッションのリスクが小さいことを示唆しています。しかし、一部のFOMCメンバーからは、インフレ指標が実際には下げ渋っており、ディスインフレのプロセスが足踏み状態になっているかも知れないとの懸念の声が上がり始めました。弊社の視点では、先週のCPIデータおよび最新の他の全てのインフレ指標は、次のPCE指数に明確なディスインフレの持続が表われると示唆しており、FRBが12月に25ベーシスポイントの利下げを行なうとの予想に議論の余地はほとんどありません。実際、弊社が考える通りに低調であれば、1月にも利下げが実施される見込みが強まると弊社は考えています。それでも、残存季節性によるものであれ、新たに課される関税の転嫁と思われるものであれ、今後発表される指標にディスインフレ傾向の反転が表われた場合には、弊社の基本的な見解である3月と5月の利下げに対する逆風になるでしょう。そして、本当にFRBが利下げに対する慎重姿勢を強めているかを知る上で、来週の記者会見におけるパウエル議長の発言は極めて重要になると見られます。現時点では、イングランド銀行と日銀のいずれも、年内に新たな措置はとらないと弊社は予想しています。最近の円安を受けて今月にも利上げを行なうとの見方が浮上していますが、弊社は1月に利上げする見込みの方がはるかに大きいとの見解を維持しています。1月の方が、春闘の賃上げ交渉に対する洞察を深めることができる上、それによって将来のインフレも見極めやすくなるためです。また、最近の日銀高官の発言も弊社見解と一致します。さらに、特に1月23日と24日の金融政策決定会合の1週間前となる1月14日には、氷見野副総裁の懇談会...
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  • 株式市場は来る2025年をどう感じているのか
    2024/12/10
    モルガン・スタンレー最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンは、株式市場の動きから2025年については控えめながらも楽観的な見方がうかがえるものの、関税とインフレをめぐる懸念が市場参加者の期待を抑制しているとみています。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は、弊社最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが選挙後の株式市場の展開を振り返り、弊社の考えとどの程度合致しているかについてお話しします。このエピソードは12月10日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。選挙が終わってから弊社では、2016年の選挙後に見られたようなアニマルスピリットの反転上昇が起きる可能性に注目しています。今では歴史となったあの時期には、我々が行ったセンチメント分析に示されたように企業、消費者、投資家の心理が幅広く改善しました。過去 1ヵ月間のセンチメントのデータは、小企業主導の比較的控えめな楽観論を反映したものになっていますが、実際のところ、サービス関連事業者の見通しはいくらか抑制されていました。こうした調査の詳細な結果や企業から寄せられたコメントを精査した限りでは、消費者と企業は2025年を迎えるにあたり、比較的楽観的ではあるものの、関税をめぐる不確実性や物価の高止まりにより、2016年の選挙後に見られたような熱狂にはおそらく至らないと思われます。2016年は、中国の積極的な景気刺激策もあって、米国が工業・製造業の不振から抜け出しつつあるときでもありました。この不振のために世界の金利水準は今よりもずっと低く、政府部門の赤字やバランスシートの状態は今よりはるかに良好だったため、減税や規制緩和といったリフレ的な政策の影響を吸収することができました。その結果、株式市場は、経済成長を促進すると解釈された財政拡張政策をほとんど即座に好感しました。しかし今日(こんにち)では、財政拡張政策はこの点でそれほど好感されているようには見えません。ひょっとしたら、財政赤字や政府部門のバランスシートといった制約の一部が響いているのかもしれません。それにもかかわらず、これらの原動力は、景気循環に比較的敏感なセクターを選好する我々にとっては依然として支援材料です。しかし、金利がなかなか動かない状況を考えると、景気敏感株のなかでもクオリティの高い銘柄を保有し続けたり、規制緩和が追い風になることが明らかなセクターに建設的に照準を合わせ続けることも理にかなっています。そのため、弊社では金融を筆頭にソフトウェア、公益事業、資本財・サービスの4セクターをオーバーウエイトとしています。金利については、S&P500のリターンと債券利回りの変化がプラスの相関関係を示していることが興味深いと感じています。言い換えれば、これは「良い」マクロ経済指標が株式のリターンにとっても「良い」ということです。さらにこの相関性は、景気敏感株とディフェンシブ株とではっきり2つに分かれています。景気敏感株は素材株を除いて金利との間にプラスの相関関係を示す一方、ディフェンシブ株は公益株を除いて金利との間にマイナスの相関関係を示しているのです。弊社ではこの現象を、たとえ利回りが比較的高い環境であっても景気敏感株と市場全体はやはりマクロ経済指標の改善を好感するしるしだ、ととらえています。とは言え、あまりハト派的でない金融政策が採られたりターム・プレミアムが上昇したりして金利が上昇する場合には、この力関係が逆回転する可能性が高くなるという点が存在します。今年4月には、10年物米国債の利回りが4.5%になるところで、経済成長とインフレがターム・プレミアムを押し上げていました。今のところ、米国債利回りはそれよりも低い水準に抑えられており、...
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  • 第二の目としてのAI
    2024/12/05
    AI画像診断が医療システムを大きく変えるとの見解を、弊社欧州医療機器担当アナリストのロバート・デイビスが深掘りしてお伝えします。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日はAIを利用したスマートイメージングが画像診断に対する弊社アプローチを大きく変えていることについて欧州医療機器担当責任者のロバート・デイビスが解説します。このエピソードは12月5日 にボストンにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。視聴者の皆さんがレントゲンやCTスキャン、超音波検査を最後に受けたのはいつでしたか。住んでいる場所によって異なりますが、1カ月待った人もいるでしょう。画像による診断は今、大きな課題に直面しています。人口増加、長寿化、慢性疾患の増加に伴い画像検査の件数が増え続けているためです。米国ではCTスキャン件数が1995年に比べ4倍に増えています。これにより、どのような影響があるでしょうか。放射線科医が3-4秒に1枚のペースでCT画像やMRI画像を毎日8時間、診断し続けている状況を想像してみてください。需要の急増に対応するためには現在このペースが必要なのです。また、米国でも高齢化が進み、メディケア加入者が増加しています。医療費は増え続け、米国の医療支出は合計で4兆5,000億ドルに達しています。これは米国のGDPの約2割に相当します。その上、患者は迅速かつ正確な診断を必要としています。しかし、待ち時間が長くて診断が間に合わないことは多く、全く診断してもらえないこともあります。このように画像診断の観点から見ると、医療システムにかかる負荷は年々増加しています。スマートイメージングでは画像処理とワークフローを改善するためにAIツールを活用しており、画像の収集、処理、分析も従来より強化されることになります。我々は長寿化と技術の普及を24年の大きなテーマの一つとして位置づけてきましたが、スマートイメージングはまさにその2つが重なったものと言えるでしょう。また、需要の増加という深刻な課題の解決にも役立つと思われます。実際に、AIは450億ドル規模の画像診断市場をすでに大きく変えつつあります。AI画像診断は画像診断の準備、計画から画像の処理、分析に至る一連の流れにおいて、複数の段階に組み込まれます。AIを利用することの利点は主に2つあります。画質が向上するため正確な診断が保証されること、患者が経験する一連の過程でスピード、効率、全体的な快適さが改善することです。また、AIは放射線科医の「第二の目」として事実上機能し、パターン認識の正確さではしばしば人間を上回ります。これは誤診を減らすために非常にも重要です。誤診は現在の米国の医療制度で年間約1,000億ドルのコスト要因となっているためです。誤診を最小限に抑えられるだけでなく、AIは原疾患の特定に加えて、潜在的な二次疾患も示すことができます。1枚の画像に3-4秒しか時間をかけられない放射線科医にとって、二次疾患は、通常は優先事項とはなりません。しかし、スマートイメージングを使うことで命を救える可能性があります。では、AIは臨床現場のどのような場面に適しているでしょうか。画像診断のワークフローには複数の段階がありますが、患者の画像診断の準備から画像処理、最終的な診断、報告、治療計画の活用に至るバリューチェーン全体でAIは有効です。放射線科医学は現在、FDAが公表したAI/機械学習対応医療機器リストの圧倒的部分を占めています。幅広い経済への影響を考えた場合、スマートイメージングは医療費、医療の質、医療の成果の改善に幅広く影響を及ぼす医療技術の重要な進化であることは間違いありません。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにも...
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    6 分
  • 「トランプ関税」について投資家が知るべきこと
    2024/12/04
    トランプ次期大統領が示した関税案と最終的に導入される政策は異なる可能性がある理由を弊社の債券・テーマ別リサーチ担当グローバル責任者が解説します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト「市場の風を読む」Thoughts on the Market へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日はトランプ次期大統領が示した関税案について投資家が知っておくべきことを弊社債券・テーマ別リサーチ担当グローバル責任者のマイケル・ゼザスが解説します。このエピソードは12月4日 にロンドンにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。トランプ氏の大統領就任はまだ1カ月以上先です。しかし、彼はその間にも自身の考える政策について情報を発信し始めています。投資家が最も注目すべきは、トランプ氏が発信し始めた関税についての考え方です。彼は中国、メキシコ、カナダからのすべての輸入品に関税を課す意向を示しています。また、BRIC諸国に対しては米ドルの代替通貨を求める考えを正式に退けない限り、すべての輸入品に関税を課すと話しています。要するに、トランプ氏は関税に関する発言が多いのです。これらの関税を提案するトランプ氏の率直さや、このような関税を実施する大統領の権限は確かに無視できませんが、それでもいずれにせよ、投資家にとって重要なのは、関税の脅威を引き起こす懸念に対処するために法制化される最終的な政策は、トランプ氏の発言の文字通りの解釈から示唆されるものとは全く異なる可能性があるということです。結局、トランプ氏の任期中に彼の関心事に対応して法制化された政策のうち、彼が当初示した通りには実施されなかった政策はいくつもあります。減税・雇用法がよい例で、トランプ氏は法人税率を15%に引き下げると主張しましたが、税率を21%とする法案に署名しました。もうひとつの例は、中国製品に対する関税第1弾の例外措置で、一部の企業はオンショア化に対する配慮がわずかであることに基づき例外措置が適用されました。これらの例から、手続き的、政治的、経済的な配慮によって政策は当初の提案とは異なる形に変わる場合があることが分かります。このため弊社基本ケースでは25年の米国の政策の方向性について、トランプ氏の大統領就任後まもなく関税の引き上げが発表されるものの、中国のほかには欧州からの一部の輸入品だけが対象となり、主要な政策アドバイザーの提案に沿って段階的に実施されると想定しています。中国に対する関税の強化については政治的に幅広いコンセンサスを得ており、この方針をとる行政当局がすでに存在します。欧州についても同じようなことが言えますが、関税の対象は輸入品全般ではなく、特定の製品に限られます。ただし、メキシコに関しては交渉によって関税引き上げを回避する余地があると考えています。また、大統領令でグローバル関税を導入した場合、法廷で差し止められるリスクがあり、たとえ共和党が多数派であっても議会がこのような手法を認めるのか弊社は懐疑的です。もちろん、弊社の予想は外れるかもしれません。例えば、次期政権は関税の急激な引き上げに伴う経済的な打撃に対して関心が薄いかもしれません。そのため、関税の引き上げが弊社の予想よりも早く、しかも厳しい場合には、弊社の25年経済予想はおそらく楽観的過ぎるでしょう。というのも、弊社は向こう12カ月で株式とクレジットの両方がアウトパフォームすると見込んでいるためです。そのようなシナリオになった場合は、米国ドルと米国債がアウトパフォームする可能性があるでしょう。弊社は今後も次期政権の情報発信に注意を払い、政策の軌道を示すシグナルを読み解く所存ですので、今後も弊社の考察をご覧ください。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにも...
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    5 分
  • 2025年はクレジットの転換点になるのか
    2024/12/02
    弊社のコーポレート・クレジット・リサーチ責任者のアンドリュー・シーツが、クレジットにとって例外的な年となったこの1年を振り返るとともに、来る2025年がこの資産クラスにとってさらに厳しい年になり得るのかについて解説します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト「市場の風を読む」Thoughts on the Market へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は、弊社のコーポレート・クレジット・リサーチ責任者のアンドリュー・シーツが、2025年のグローバル・クレジット市場の見通しについてお話します。このエピソードは12月2日 にロンドンにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。モルガン・スタンレーのストラテジストとエコノミストは先日、来年の予想について取りまとめました。クレジットにとって、2025年は別れを告げる年になりそうです。今年2024年はクレジットにとって、並外れて良好な環境となりました。おそらくもう聞き飽きてしまったでしょうが、クレジットは適度を好み、極端を嫌う資産クラスです。そして、2024年にはその「適度」がふんだんにありました。経済は適度に成長し、インフレは適度に進み、利下げは緩やかに行われるという経済環境でした。企業の状況も適度でした。バランスシートは安定し、株高にもかかわらず企業同士の買収はまだ低水準にとどまっています。その結果、スプレッド、すなわち企業が支払わねばならない国債に対する上乗せ金利はほぼ一本調子で縮小し、過去最低に近い、具体的に言えば20数年ぶりの好ましいレベルにまで小さくなっています。 来年にはこの状況が変わる、と弊社はみています。米国選挙と、その結果として共和党がホワイトハウスと議会の上下両院を手に入れたことは、関税から税制、移民問題にいたる政策の結果の幅がかなり広がることを示唆しています。これらの政策は今後、これまでに比べて多種多様な結果を経済にもたらします。企業の楽観主義とアニマル・スピリットがさらに強まるシナリオも考えられれば、関税と移民問題への取り組み次第では経済成長が大幅に減速しインフレ率も高くなるというシナリオも考えられるでしょう。そのように多種多様な結果が生じても、互いに打ち消し合うために最終的な影響は差し引きゼロ、という資産クラスもあるかもしれません。しかし、クレジットはそれにあてはまりません。クレジットという資産クラスでは、企業活動が活発になってもリターンが増えることはありませんが、逆に経済成長が予想以上に鈍化すると損失がもたらされます。そして関税が欧州とアジアの両方に困難をもたらす恐れがあることを踏まえれば、その影響は世界的なものになると弊社は考えます。来年には、クレジットのスプレッドが世界中で適度に拡大することになるでしょう。ただ、もし2025年が、何かと適度でクレジットに有利だった2024年の環境にサヨナラを告げる年だとしたら、そのサヨナラはある程度時間のかかる「長いお別れ」になることを強調しておきたいと思います。弊社の経済予想のカギのひとつに、関税や税制、移民政策に大きな変化があったとしてもその効果はすぐには現れないというものがあります。クレジットに有利な今日の強い景気は、来年に入ってもしばらくは持続するでしょう。実際、2025年上半期のほとんどで景気は今日のそれとかなり似通ったものになるであろう、すなわち経済が適度に成長する一方でインフレ率は低下し、中央銀行の政策金利引き下げも続くだろうというのが、我々の見方です。端的に言えば、来年のことを考えると、2025年はクレジットの転換点に、ただしすぐには訪れない転換点になる年かもしれません。クレジット市場を下支えするかなり強い景気が来年上半期に入ってもしばらく続くものの、下半期はそれに比べて数段厳しい状況になる、というのが弊社で得られた最善の予想です。社債においてリスク調整後のリターンが最も高くなるのは...
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  • 米国ホリデーシーズンの買い物は小ぶり寄りに
    2024/11/25
    ホリデーシーズンを前に、米国テーマ別 株式リサーチ・ストラテジスト、ミシェル・ウィーバーが、支出を増やすとみられる消費者層とその理由、そして恩恵を受ける可能性のある業界について解説します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト「市場の風を読む」Thoughts on the Market へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。今回は、米国テーマ別株式リサーチ・ストラテジストのミシェル・ウィーバーが、今年のホリデーシーズンにおけるショッピングに関する、米国の消費者の意向についてお話します。このエピソードは11月25日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。このエピソードは11月25日 にニューヨークにて収録されたものです。年初来の消費支出は、全般として堅調なトレンドを維持してきており、ホリデーシーズンにおける支出にとって明るい材料となっています。米国でおおよそ2,000人の消費者を対象とする、弊社が最近実施した独自の調査では、2022年、23年と比べて今年のホリデーシーズンの消費に関する見通しは、より明るいことが示されました。予想通りのことですが、従来から消費支出全体の主なドライバーであった、より高所得の家計が、今シーズンも支出を牽引するとみられます。総じて、今年のホリデーシーズンにかける予算は増加すると弊社はみています。調査によると、米国の消費者のうち37%が今年の予算を去年とほぼ同程度と考えていることが分かっています。また、35%は支出増を、22%は支出減を予定しています。従って、全体では13%前後のプラスになる計算です。ただし、手放しの盛り上がりとは言えず、消費者の予算配分に関する計画は選択的なものになる傾向が続くとみられます。割引やキャンペーンが、購買行動に影響を与えそうです。実際に、割引がない場合、消費者の44%が買い控える、あるいはより安価な商品を購入する可能性があるとし、25%は支出を大幅に減らすと回答しています。割引やキャンペーンがなくとも、支出の計画を変更しないのは、全体の25%に過ぎない、ということになります。また、同調査で、消費者が購入を予定している商品カテゴリーについての質問をし、支出増を予定している消費者と支出減を予定している消費者の割合の差を調べました。すると、支出意向の差が最も小さくなったのは、スポーツ用品、家具・台所用品、電子機器などの高価格帯のカテゴリーでした。一方、衣料品、おもちゃなどの低価格帯の商品はよりポジティブな結果となりました。続いて、消費者向けの業界ごとに、特徴をいくつか見てみましょう。航空業界では、米国運輸保安局の好調な統計結果から、ホリデーシーズンの堅調な飛行機での旅行が予想されます。これは、旅行と体験に対する力強い需要が継続していることと整合性があります。大規模小売店や家具店で取り扱われる商品に代表される耐久財では、今年の支出は鈍化していますが、環境は正常化しつつあり、今年のホリデーシーズンにとって、よりポジティブな条件が整う可能性があります。一方でeコマースは、足元では圧力にさらされています。裁量品が環境の軟化の影響を受ける一方で、食品や生活雑貨などの必需品が大幅な伸びを支えました。シーズンの日数が例年より短いことも、eコマースに影響する可能性があります。ブラック・フライデーとクリスマスの間に27日間しかなく、シーズンが最も短くなる並びとなっています。従って、平均出荷配送にかかる日数が比較的長いeコマース事業者への影響が考えられます。このホリデーシーズンの家電製品の売上高には、注意が必要だと弊社は考えています。シーズンを目前にして、消費者向けハードウェアに対する支出意向は、いまだ消極的にとどまっています。そして最後に、おもちゃ、レジャー製品、サービスについては、懸念していたよりも良好になる可能性があるとみて、慎重な楽観姿勢を維持します。総じて、今年のホリデーは多くの...
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  • アジアのクリーンパワーは転機を迎えたのか?
    2024/11/20
    南アジア・エネルギー担当アナリストのマヤンク・マヘーシュワーリーが、アジアのエネルギー見通しにおいて電力業界全体に変化をもたらしている主なドライバーについて説明します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。今回は、南アジア・エネルギー担当アナリストのマヤンク・マヘーシュワーリーが、アジアの発電と電力消費に影響を及ぼしている大きな変化についてお話します。このエピソードは11月20日 にシンガポールにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。去年、世界では25兆 kWhの電力が消費され、そのおおよそ半分をアジアが占めました。世界の他の地域と同様アジアの需要は拡大しており、電力消費量は転換点にあります。2030年までの世界の電力消費量は、過去10年間より26%速いペースで成長すると弊社は予想しています。アジアの電力市場はやや米国と似た状況で、今後数年間、需給が引き締まると予想されます。ただし現在でもインドやシンガポールは、電力需要がコロナ禍前の1.5倍から2倍のペースで成長しており、マレーシアもそうした状況に近付いています。こうした急速な成長を何が牽引しているのでしょうか?住宅向け電力需要の他、生成AIデータセンターや生産施設のリショアリングが、電力需要の成長を牽引しています。新たな半導体投資が行われ、新しいエネルギー・サプライチェーンの拡大自体が、実際に需給の引き締まりに拍車をかけています。しかし重要なことに、クリーンパワーのコストと需要の地域による違いは歴然としています。アジアでは電力価格が着実に上昇してきました。クリーンパワーだけでは需要の急拡大に対応できないため、各国の規制当局は、石炭火力発電所の利用期間延長、新たなガス・石炭火力発電所の建設、さらには原子力発電の再開といった形で、供給不足を認識しています。ただし、興味深いことに、クリーンな発電のコストは、コロナ禍後に大きく上昇した後、かなり急速に低下し、2024年はトレンドを下回りました。平均するとアジアの太陽光発電パネル価格は50%下落し、陸上風力発電のコストは10%低下しました。エネルギー貯蔵コストは、3分の1も低下し、過去5年間には見られなかった水準になりました。しかし、こうしたコストの低下には地域によって大きなばらつきが見られます。米国と欧州では関税その他供給のボトルネックにより、コストの低下ははるかに小幅にとどまっています。アジアでは、過去数年間、発電能力の拡大で中国に後れを取っていた南アジアを中心に、発電会社の採算が大幅に改善しています。自前のクリーンパワーのサプライチェーンを構築しようとしている地域では、生産能力の過剰さえ生じており、これがクリーンパワーのサプライチェーンにおける価格下落の一因となっています。中国で既に見られるクリーンパワーのサプライチェーンにおける生産能力の過剰に、クリーンパワーに対する需要が極めて急速に成長しているインドや東南アジアが、追い討ちをかけています。アジアでクリーンパワーを巡る様々な展開が進む中で、COP29は新たな気候目標を発表しました。今年はアゼルバイジャンで開催されている国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP29)では、2035年までに国全体の温室効果ガスの排出量を59%から67%削減することを目指しています。以上、アジアのクリーンエネルギー最新情報をお届けしました。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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  • M&Aブームの幕開けか?
    2024/11/15
    コーポレート・クレジット・リサーチ責任者のアンドリュー・シーツが 景気改善、緩やかなインフレ、今後の追加利下げに伴いM&Aが増加すると思われる理由について、弊社コーポレート・クレジット・リサーチ責任者のアンドリュー・シーツが解説します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。今回は、モルガン・スタンレーが企業活動の大幅かつ持続的な拡大を見込む理由について、弊社コーポレート・クレジット・リサーチ責任者のアンドリュー・シーツが解説します。このエピソードは11月15日 にロンドンにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。企業の合併・買収、すなわちM&Aが、24年を皮切りに複数年にわたり大幅に増加すると我々は引き続き見ています。今週は、この弊社の見解を改めて取り上げたいと思います。今年はM&Aの件数が25%増加しており、3月時点の弊社の当初予想を幾分下回ってはいるものの、M&Aの大幅かつ持続的な増加をもたらす主たる原動力は揺るぎないと我々は考えています。その原動力は複数に及びます。現在、世界のM&A件数は過去の動向と比べて、あるいは株式市場全般の強さと比較して、非常に低い水準にあります。経済全般、これは多くの場合、M&A活動にとって重要な要素ですが、これは好調で、特に米国ではインフレ低下が続く中で利下げが始まっています。売り手側では、プライベートエクイティのポートフォリオの成熟、ベンチャーキャピタルのパイプラインの成長、株式バリュエーション中央値の上昇が取引の動機となります。また、買い手側では、プライベート市場の4兆ドルもの待機資金、金融以外の企業のバランスシートに眠るおおよそ約7兆5,000億ドルの現金、M&Aの資金調達を可能 にする開かれた資本市場がM&Aを促す動機となります。これらの高水準の原動力は、各地域のボトムアップ分析でも確認されています。弊社の株式リサーチでもM&Aを見込むより強力な根拠を認識しており、我々は世界60の株式チームにそれぞれの見解を質問しました。その結果、地理的な場所やセクターによって違いはありますが、これらの業界を最も深く見ている担当株式アナリストもM&Aが増加するとみる強力な根拠を認識しています。政策的な背景も重要です。M&Aは今年になって増えていますが、弊社が当初予想したほどには増えていないひとつの理由として、中央銀行の利下げ開始時期と米国選挙の結果を巡る不透明感が挙げられます。しかし、この2つの不透明感は現在、ある程度は解消しています。FRB、ECB、BOEはすでに利下げに踏み切っており、米国選挙で共和党が勝利した結果、アニマルスピリットがかき立てられる可能性があります。欧州もこのストーリーの重要な一角を担っており、EUの強化に向けた新たなアプローチがM&Aを後押しする可能性があります。投資家にとっては、企業活動の増加が持続するとの期待感が金融株を支えると思われます。我々の予想が外れる可能性としては、M&A活動は基本的に経済的な信頼感と市場の信頼感に左右されるため、経済が予想よりも弱かったり、株式市場が予想よりも軟調であった場合、M&A件数は予想よりも少なくなるでしょう。政策も重要です。米国の次期政権はM&Aに対してより支援的であると弊社は見ていますが、政策が変化して企業心理が悪化したりインフレ率が上昇したりすれば、弊社の見解は誤りとなる可能性があります。最後に、多極化した世界はM&Aを支援する方向に動くと弊社は考えています。なぜなら、世界的な競争力を持つ地元の一流企業を増やそうという力が働くためです。しかし、同じように世界的な不調和問題でM&Aが中断したり、より全体的な信頼感が損なわれる場合には、この予想が誤りとなるかもしれません。時が経てば分かるでしょう。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽...
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