• まちのあかり〜80年前に街灯の下で出会ったアメリカ兵と戦災孤児の奇妙な友情物語
    2025/01/20
    ・主人公/ユウジ5歳。戦災孤児(※物語のなかで名前は出てきません) 1945年12月。終戦の年、灯火管制が解除され、暗闇を照らす街灯の光を見つめながら、ユウジは戦争が終わったことを実感していた・・・(CV:山崎るい) 【ストーリー】 <シーン1/1945年12月:終戦後の吉浜>※モノローグはユウジ。五歳児の少年声もしくは女性が出す老爺のイメージ/ユウジの喋り方は戦災孤児らしく声は子供だが口調は大人びている ■SE〜海辺の音/街灯がジリジリと音を立てる 「とうちゃん、かあちゃん・・」 1945年12月。 終戦から4か月。 灯火管制が解除された夕暮れの高浜。 5歳のオレは、粗末な釣竿と釣り糸を垂らす。 ハゼでもタコでもいいからなんかかからんかなあ。 今日も釣れんとどもならん。 もう2日、お腹になんも入れていないし。 締め付けられるような空腹感。 街灯の小さな灯りの中で幸せだった日々を思い浮かべていた。 とうちゃんは戦争にいき、戦死。 かあちゃんは名古屋の工場で空襲にあい、命を落とした。 ぼっちのオレをみんなは戦災孤児と呼ぶ。 かろうじて立っているような街灯。 海辺の砂利道を照らす裸電球。 ジリジリと音を立てて点いたり消えたりを繰り返す。 淡い灯りの中でとうちゃんとかあちゃんの笑顔が、浮かんでは消える。 そのとき、誰かが、肩を叩いた。 『ハロー』(ボイスNo.911797) 天を突くような、のっぽのアメリカ兵がオレを見下ろしている。 驚いて釣竿を放り投げ、立ち上がる。 こいつらが、とうちゃん、かあちゃんを・・・ アメリカ兵は、睨みつけるオレを見て、両手をひろげ、歯を見せた。 たどたどしい日本語で話しかけてくる。 こいつは豊橋の駐屯地からきたGHQの兵士。 名前は、トム。 自分は日本語ができるから、通訳として日本(にっぽん)にきた。 なんで日本にきたのかというと、日本の非武装化、民主化、治安維持だという。 そんな難しいこと言われても、よくわかんない。 オレは横を向いて無視してたけど、トムは前に回り込んできてしゃべる。 根負けして座りなおすと、今度はオレの横に座った。 うわ、座ってもでっかいじゃん。 お相撲さんよりおっきいんじゃんか。 トムはGHQのジープに乗って、高浜の瓦工場を見に来たらしい。 そのあと、町の中をぶらぶらしてたら、オレを見つけたんだって。 街頭の裸電球に2人の姿がぼんやりと浮かぶ。 人が見たらなんと言うだろうな。 オレまた村八分かなあ。 ま、いいや。どうせ、誰も食べもんくれるわけじゃないんだし。 なんて考えてたら、お腹がぐう、と鳴った。 トムはまた、両手をひろげて、オレに何かを差し出した。 お?くんくん(擬音)。 これが噂の「ギ・ミ・チョコレイト」か。 食べてみん、と言われて、恐る恐る口に入れる。 ん?なんだこの味? はじめて食べる味・・うまい。 知らんかったけど 「甘い」というのは、こういうのをいうんだろうな、きっと。 うすあかりの中で、オレはトムの上着に目がいく。 でっかいポケットが不自然に膨らんでいた。 オレの視線を見て、トムはポッケからなにかをとりだす。 それは・・・一冊の本。 表紙の中で、黄色い髪の少年が空を見上げている。 「え、なんだん?」「リル・プリン」? なんのこっちゃ。 っていう顔をしてたら、トムがまた話し出す。 これは小さな王子さまが出てくるお話。 フランスという国の作家が書いた童話だ。 息子への贈り物にするんだと。 日本に配属される前、 ニューヨークという町に住む友達に頼んで、買ってきてもらったらしい。 トムに言われるまま、ペラペラと本をめくる。 ああ、英語だし、なんて書いてあるかさっぱりわからん。 でもたまに絵が描いてあるな。 挿絵? ふうん、そう言うんだ。 文字なんてどうでもいいから、挿絵だけを見ていくと、 変わった男の絵が現れた。 長い棒を持って高いところの行燈に火を点してるのか? なんだ?これ? 点灯夫? 毎晩街灯に灯りをともしていく男だげな? はあ?ヒマなんだな。 とは言いつつ、オレは点灯夫の挿絵にひどく興味を引かれた。 オレとトムの頭の上には、挿絵のようにハイカラじゃない 裸電球の街灯が...
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  • 20年前の私へ〜40歳の自分が20年前にタイムリープしたら20歳の自分に会ってしまって未来を変えることことになる話
    2025/01/15
    愛知県高浜市を舞台にしたボイスドラマです(CV:山崎るい) 【ストーリー】 <シーン1/2025年:いきいき広場の建物内> ■SE〜いきいき広場の環境音 「陶芸アーティストが祝辞ゲスト〜!?」 思わず、エキセントリックな声が出てしまった。 私は、高浜市の施設で働く職員。 今年は文化スポーツグループのお手伝いで 「20歳のつどい」の開催準備を手伝っている。 まあ、高浜市なんだから、別に陶芸家が祝辞を述べたって なんの不思議もないんだけど。 いや実は私、20年前に陶芸家のタマゴと付き合ってたんだよね。 まさか、その彼じゃあないでしょうけど、ドキっとするじゃない。 この20年間で一番驚いたかも。 ビビったときのクセで、思わず目の上のホクロをさわる。 もう・・ ずうっと「死なない程度に生きて」きてるっていうのに。 とにかくもう、考えないようにしよう。 って言っても仕事だから、情報はどんどん入ってくる。 どうもゲストは、海外で地味に活躍している陶芸アーティストらしい。 で、高浜出身。そりゃそうよね。 ■SE〜高浜港駅前の環境音(雑踏) ふう〜。 外へ出て、深呼吸。 気分を変えようと、自販機でお茶を買ったとき、 ふと目の端になにかが映った。 横断歩道を高浜港駅の方から歩いてくる・・・おばあちゃん? ちょっとヨタってるけど、大丈夫かしら? 考えるより先に足が動く。 そこへ、駅のロータリーから猛スピードで車が突っ込んできた。 「おばあちゃん!あぶない!」 ■SE〜急ブレーキの音 とっさにおばあちゃんを庇い、地面に受身の姿勢で倒れる。 瞬間、目が合った。 あれ、このひと、どこかで会ったことあるかも・・ そう思っているうちに、意識が遠のいていった・・・ <シーン2/2005年:「成人式」直前の会場(衣浦グランドホテル)> ■SE〜公民館の環境音/「成人おめでとう!」の声 『大丈夫ですか?』 「はい・・・ありがとうございま・・」 えっ? ここどこ? 高浜港駅じゃない。なんか、記憶にあるような・・ 『歩けますか?』 「あ、ああ、はい・・・だいじょう」 「え・・・あなたは・・・?」 『はい、今から成人式なんです』 わ、わ、わたし〜っ!? お気に入りの椿の振袖。 気が強そうな表情も、目の上のホクロも。 あ〜ホクロさわってるし。 ビビってんのか、私に!? 落ち着け。落ち着け。 かんばん。かんばん・・入口の看板。 2005年・・高浜市成人式? え〜!? じゃあここは衣浦グランドホテル〜!? 20年前にタイムリープしたってこと? ボイスドラマじゃあるまいし。 『ホントに、大丈夫ですか?』 「今日、二十歳の集いなの?」 『いえ、成人式です』 そうか。 でもなんで? 私が20年前に召喚されたのはなぜ? ■SE〜ハイヒールの足音 と、そこへ駆けてきたのは・・ 「ママ!?」 『ママ!』 『え?』 「あ、いや別に・・どうぞ」 『ママ、来なくてもいいって言ったでしょ』 『一生に一度の成人式?』 『ふん。成人式じゃなくたって、今日も明日も、一生に一度よ』 いや、2度目なんだけどな・・ そっか、私、20年前から、ママとうまくいってなかったんだ。 え?どうしてだっけ? 『私、成人式終わったら、彼の工房へ行くから』 『当たり前じゃない!だって陶芸家になるんだもん』 『冗談でもないし、寝ぼけてもない!』 ・・そうだった。 私、短大出たら陶芸の道へ進もうと思ってたんだ。 『別に反対されたって、関係ないから』 そりゃ反対するよねえ。せっかく大学で介護福祉士の資格までとったのに。 それに、陶芸のセンスなんてまったくないでしょ、あんた・・・ってか私。 『とにかく帰ってよ。私、ひとりで式に出る』 あーあー。 さっさと行っちゃって。 しょうがないなあ。 なんか単なるわがままじゃん。ガキっぽい。 でも、これ、私の選択? だった・・よね・・たしか。 残されたママ、どうしたんだろう。 え? 涙!? やだ。やめてよ、ママ。 思わず、つい、声をかけてしまった。 「あのう・・」 『え?・・はっ・・』 「二十歳の集い・・じゃなくて、成人式の付き添いですか?」 『あ、はい・・』 つい声かけちゃった・・どうしよう。 『でも、ちょっと娘と言い...
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  • 舞い降りた天使たち〜なんとなく運営している子ども食堂に訪れたクリスマスの奇跡
    2025/01/15
    高浜市内でベーカリーショップを営むバツイチ女性の詠美。亡き母から受け継いだお店では毎月2回、イートインスペースを開放してこども食堂を運営しているが、あまり真剣には考えていない。そんなこども食堂に今年からやってくるようになったのは、小学校低学年くらいの女の子ユキと、ユキが連れてくる幼稚園児くらいの男の子ナギ。姉弟だと思っていたのだが、実は・・(CV:桑木栄美里) 【ストーリー】 <シーン1/クリスマス商戦の街角(1年前)> ■SE〜街角の雑踏/聴こえてくるクリスマスソング 『恵まれないこどもたちに寄付をお願いします!』 「え?あ、ごめんなさい。いまちょっと持ち合わせがなくて・・」 え?嘘じゃないわ。 だって最近は電子マネーばっかりで、現金なんて持ち歩かないもの。 こう見えても私、市内で月2回『こども食堂』をやってるんだから。 って私、誰に言ってるの? ウケる。 私の名前は詠未。 34歳。バツイチ。 高浜市内でベーカリーショップをやってるんだ。 元々低血圧の方だから、朝の早いパン屋は不安だったけど。 まあ、ママがおばあちゃんの代から守ってきた店だし。 ママが亡くなったとき、ホントはお店たたんじゃおうと思ったのよ。 でもね、考えてるうちに、『こども食堂』の日がきちゃって。 知ってる? 高浜市内の『こども食堂』って、高浜市こども食堂支援基金っていう支援を受けてるの。 それに、地元の人や企業からも寄付があるし、ボランティアも来てくれるんだ。 で、食べに来てくれる、こどもたちがね。 美味しい美味しいって言って、本当に美味しそうに食べてくれるんだ。 私、大して料理うまくないのに。 あ、そうそう。 こども食堂は、ベーカリーのイートインスペースでやるんだけど、 この日はパンだけじゃないのよ。 朝から、ごはんをいっぱい炊いておにぎり作ったり、 あまった分でとりめしの混ぜご飯を作ったり、もう大変なんだから。 うん、ママの意志をとりあえず継いで、お店も子ども食堂も守ってるって感じ。 いまっぽくリフォームして。 そう、あれは半年前。 学校が夏休みに入った頃だったかな。 <シーン2/こども食堂・夏> ■SE〜初夏のセミの声〜こども食堂の環境音へ 「ちょっとみんな!ちゃんと並んで! こら、タケシ!横はいりしない! 今日のおかずは・・ハンバーグよ!」 ■SE〜こどもたちの歓声があがる はぁ〜。 今回も結構持ち出し多いなあ。 ん?あれ? 入口に立ってるのって・・・ 小学校1年か2年くらいかな。 ショートヘアの女の子と、幼稚園児っぽい男の子。 きっと姉弟(きょうだい)・・だよな。 「どうしたの? 遠慮しないで、お入りなさいよ、中へ」 『はい・・』 消え入りそうな声で答える。 しっかりつないだ手にひっぱられて、弟も入ってきた。 「そこの隅っこ、空いてるから座って」 『はい』 「とりめしとハンバーグ、2人分、置いとくね」 『ありがとう・・』 2人は、米粒ひとつ残さず、ハンバーグのソースもスプーンですくいとって キレイに完食した。 淹れてあげた紅茶も一滴も残さず飲み干す。 食器の入ったお盆を厨房へ持ってくる2人。 「あ、そんな。洗わなくてもいいのよ」 洗う場所を探す2人に思わず声をかけた。 2人はお辞儀をして、お店を出ようとする。 「ちょっと待って」 不安気な表情で振り返る女の子。 私はつとめて笑顔で・・ 「あのね、全然強制じゃないんだけど、 ここに来てくれる子たちにはノートに名前とか書いてもらってるの。 あ、でも、別に書かなくてもいいのよ」 結局、少し躊躇ったあとで、少女は名前を書いた。 ユキとナギ。 だけど、苗字が違う。 どうして? そう。2人は姉弟ではなかった。 しかも住所は市外。 ホントは高浜市内のこどものための食堂なんだけどな。 でも、そんなこと構わない。 月に2回、子ども食堂を開く日、2人は必ずやってきた。 少しずつ話をするようになってわかってきたこと。 ユキとナギが知り合ったのは、病院のリトミック室。 ユキは、母親が入院している。父親はいない。 ナギは・・・ ほとんど口をきかないから詳しいことはわからないけど 親の話をすると泣き出...
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  • KOMACHI〜人形小路のよしはまこまちはVチューバー!?
    2025/01/15
    愛知県高浜市を舞台にしたボイスドラマです。 主人公はM・Iエム・アイ=14歳。中学2年生。普段は人見知りする大人しい女の子。しかしネット上では知る人ぞ知る大人気VTuber=バーチャルライバーの「KOMACHI」という顔を持つ。授業や試験の関係でホロライブは週1回程度しか配信できないが、半年に一回のニコ生ライブパーティでは、歌って踊るKOMACHIはスパチャも一番多い超人気者である・・・(CV:桑木栄美里) 【ストーリー】 <シーン1/夏の生ライブパーティ> ■SE〜LIVE会場の大歓声 「みんなぁ、今日はKOMACHIの生ライブパーティに来てくれてありがとう!」 「次は11月だよ!」 「ぜったいまた来てね〜!!」 バーチャルスタジアムを埋め尽くしたお客さんのアバターが 立ち上がって大歓声をおくる。 鳴り止まない拍手と歓声。 私はゆっくり歩き、手を振りながらステージ袖へと退場する。 私の名前は、『KOMACHI』。ローマ字だよ。間違えないでね。 VTuber、つまりバーチャルライバー。 十二単を身に纏い、そのビジュでキレッキレのダンスを踊る。 時には持ち歌を熱唱する。 週に1回のホロライブは、毎回2万人以上が参加。 年3回のライブパーティでは、全国のライバーたちと一緒にステージに立つ。 今日のLIVEなんて、5万5千人のアバターが参加したんだ。 そのうち5千人くらいは推しが『KOMACHI』だと思う。 アリーナ席を入れると東京ドームと同じキャパ。 前売りなんて30分で完売した。 なのに、スパチャの額も半端じゃない。 私、未成年だからこっそり貯金してるんだけど。 怖くて、残高見られないよぉ。 中学に入ってから、毎週ずっとホロライブを続けてきたら 2年間でこんなんなっちゃった。 え? どこでそんなバーチャルライブをやってるのかって? う〜ん。内緒だよ。 実はね、吉浜駅の近くに、歌舞伎茶屋ってのがあるんだ。 うち、そこのオーナーと親戚だから、 人形歌舞伎を上演してないときに、一角を使わせてもらってるの。 おっきな建物の中だから、誰にも見られないし、最高でしょ。 はたから見てると、パソコンの前で独り言しゃべってるだけだから 何も言われないよ。 多分、オーナーさんは、TV電話してるって思ってるみたい。 まあ、間違っちゃいないけど。 <シーン2/学校の教室> ■SE〜学校のチャイム/教室の環境音 「あ、おはようございます・・・」 私の本職は・・ ってか本当の姿は、吉浜中学の2年生。 こう見えて、人見知りするタイプなんだ。 周りからはきっと、陰キャでコミュ症って思われてる。 趣味は散歩と、スイーツめぐり。 あ、友だちいないから1人でブラブラするだけだけど。 名前?あ〜、個人情報訊く? まあ、いいや。 M.I.(エム・アイ)。 みんなからも、たまーにそやって呼ばれるんだ。 名前の頭文字じゃないよ。 私の名前、漢字三文字の真ん中の言葉からとったの。 まあ、あとは想像して。 うちのクラスは37人。 この中にも、わかってるだけで私のファンが5人いる。 いや、私じゃなくて『KOMACHI』のファンだわ。 なんか、すっごく後ろめたいから、 ホロライブのとき『中学生以下はスパチャ禁止!』なんて言ってるんだよ。 でも、そういうと余計にみんなスパチャしてくるんだよなあ。 ちょ、誘導なんかしてないって。 うち、そんなあざとくないもん。 ただ、1人だけ、誰だかわかんない子がいるんだー。絶対このクラスのはずなんだけど。 毎回、一番最後にスパチャしてくれる子。 それって、ライブを評価してくれたのかな、って、ちょっと嬉しくなる。 いつか必ず、見つけるから。 <シーン3/人形小路> ■SE〜人形小路の環境音(車も少なくそんなにうるさくない) 「あゝ気持ちいいなあ」 秋は夕暮れ。 この時期人形小路を散歩するのが、一番好きな時間。 『夕日の差して山の端いと近うなりたるに・・・』 ■SE〜カラスの鳴き声/夕暮れの環境音 な〜んて、意外? え〜、私って文学少女なんだよ。 だってほら、吉浜から海の方まで歩くと、本当にこのまんまの景色なんだから。 つるべ落としで、気がつくと帷が降りて、虫の声が聴こえてくるの。 VTuberの『KOMACHI』が十二単を纏っているのも、 清少納言...
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  • Welcome to TAKAHAMA!〜留学生はブロンドの美女!
    2025/01/15
    愛知県高浜市を舞台にしたボイスドラマです。 主人公は翔カケル=20歳。大学生。高浜生まれ高浜育ち。小さな町が退屈で仕方がない。大学卒業後、早く東京に出て行きたいと考えている Emilyエミリーは20歳。オーストラリアの大学生。翔の家をホストファミリーとしてホームステイをするためにやってきた。実はエミリーが高浜を選んだのには理由があった・・・(CV:桑木栄美里) 【ストーリー】 <シーン1/セントレアの空港ロビー> ■SE〜飛行機の離陸音〜空港ロビー6の音 『Nice to meet you!』 え? 女の子? 聞いてないよ〜 って、オレが聞かなかったんだっけ・・ 「Welcome to TAKAHAMA!」って 超恥ずいボードを持ってるオレ。 ホームステイする留学生を迎えにきたんだけど。 大学が休みの日でよかったぁ。 こんな姿、友だちに見られたら、なんて言われるか。 まあ、いっか。 どうせ来年はここにはいない。 卒業したら東京いくんだし・・ 『I’m Emily よろしくおねがいします』 「よ、よろしく カ、カ・・カケルです」 なんだ、日本語話せるんじゃん。 すこ〜し安心。 <シーン2/車内〜セントレアから高浜へ> ■SE〜shの車内の走行音 『にほん、きたかったです』 「そ、そうですか。 でもなんで?高浜なんて・・ 東京とか京都とか、もっといいとこいっぱいあるのに」 『たかはまにきたかったの。うれしい』 「見るところ、なんにもないですよ」 『どうして?カケルは、たかはまのひとじゃないの?』 「いや、正真正銘高浜生まれ、高浜育ちです」 『ふうん』 そう言いながら窓の方に顔を向ける。 車はちょうど衣浦大橋を渡り始めていた。 「wow!Great!』 エイミーの顔がゆっくりと後方へ回転する。 瞳には、夕陽が映える細長い海が映っていた。 「え〜、そうかなあ。 あんなん、海じゃないじゃん」 『great grandmaがいってたとおり』 great grandma? なんだっけ? え〜っと、グランマがおばあちゃんだから・・・ ひいおばあちゃん!? へえ〜、そうなんだ〜。 衣浦大橋を渡り終えたとき、 『あのきいろい たてものは?』 「やきものの里 かわら美術館だよ」 『やきもの?陶芸ですか?』 「そ、そうだよ」 『とまって。 とうげい、やりたいです』 「え〜。 寄り道してたら、また母さんに怒られちゃう」 『おねがい。カケル』 「あ〜もう。 ま、しゃあないか。母さん、ごめん」 でも、陶芸教室なんてやってたっけか? あ、日曜のみ開催。 ラッキー、じゃなくてアンラッキーだわ。 <シーン3/かわら美術館〜陶芸教室> ■SE〜陶芸教室〜電動ろくろの音 『awesome!』 陶芸、初めてって言ってた割に なんか、サマになってるなあ。 粘土を練る手つきとか、どうしてなかなか。 ちょ、オレよりうまいんじゃね。 へ〜、いつもYouTubeとか見てたんだ。 にしても、大したもんだわ。 ちゃんとマグカップになってるよ。 『とうげい、やってみたかったの』 「すごいよ。参加者の中で一番うまいんじゃないかな」 『Thank you!』 「焼き上がるまで2ヶ月くらいかかるから、できたら送ってあげるね」 『うれしい!つぎはおにがわらをつくってみたい』 次? また高浜に来るつもりなんだ・・ それにしても やきものって、こんなに人を幸せにできるんだな。 そういえばオレ、高浜で育ったのに やきもののこと、ちゃんと考えたことなかったわ。 興奮醒めやらぬエイミーを乗せて、吉浜の実家へ。 ちょうど菊まつりの準備で、人形小路には細工人形が飾ってある。 『あれはなに?』 「細工人形だよ」 『さいくにんぎょう?』 「え〜っと、crafted doll・・かな」 『Oh、crafted doll! たかはまのぶんか、ですね』 「そう・・・かな」 <シーン4/カケルの家〜仏間> ■SE〜おりんの音「ちーん」 実家にあがったエイミーは、なぜか仏壇の前へ。 さっきまでのような笑顔ではなく、まじめな表情。 目を閉じて手を合わせる。 ん?作法も知ってるのか? まてまてまて。 ちょっと。・・・泣いてる!? どういうこと? それに、母さんもなんでエイミーを仏間に通す? 仏壇の中には位牌と遺影。 ひいおじいちゃんとひいおばあちゃんが 仲良く肩を寄せて微笑んでいた。 オレだって会ったこともない2人...
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  • 追想の彼岸〜彼岸花とでか落花生
    2025/01/15
    愛知県高浜市を舞台にしたボイスドラマです。 主人公は30歳。システムエンジニア。 10年ぶりに高浜(高取)へ帰って来た理由は祖母のお葬式。祖父の代まで農家だったが、祖父亡きあとは祖母がこじんまりと畑を継いでいた・・・(CV:桑木栄美里) 【ストーリー】 <シーン1/稗田川のほとり> ■SE〜稗田川のせせらぎとセミの声 9月の風。 残暑をまだ感じられる季節。 生ぬるい風が川面を撫でていく。 風は彼岸花の黄色を揺らしながら、私の頬に触れて流れていった。 10年ぶりの高浜。高取。 あまり変わってないなあ。 変わったのは、おばあちゃんのいない世界になったこと。 そう。私が帰ってきたのは、祖母の葬儀に出るため。 10年間も故郷に背を向けて、私は東京でがむしゃらに働いた。 システムエンジニア。 いまの時代、人気の職業は、そのままハードな仕事を意味する。 大好きなおばあちゃんが、1年前から体を壊していたことも知らずに 私は走り続けていた。 おばあちゃんも、頑張ってる孫娘に要らぬ心配をかけるな、 と、父さんや母さんに申しつけていたらしい。 プログラマーという仕事がなんだかわからなくても おばあちゃんには自慢の孫だったみたい。 近所の人たちにいつも私の仕事の話をしてたんだって。 よくわかんないくせに。ふふ。 おばあちゃんらしいな。 臨終の連絡をもらったとき、 私は基幹システムの最終チェックで徹夜が続いていた。 メールに気がついたのは、逝ってしまったあと。 父は、告別式に間に合えばいいから、と返信してくれたけど。 クライアントの基幹システムを無事に納品して 稼働することを確かめたのは、ちょうど通夜が終わる頃。 次の日、私は始発の新幹線で高浜へ向かった。 鯨幕の張られた玄関。 おばあちゃんらしく華やかな供花が一対。 ユリ、胡蝶蘭、カーネーション、菊。 その中に、黄色い、艶やかな・・・彼岸花。 そっか・・・ 赤い彼岸花は本来供花で飾っちゃいけないんだっけ。 でも、おばあちゃんの一番好きな花だったから・・・ 父さんも母さんもわかってるなあ。 おばあちゃんの顔さえゆっくり見られないまま、 あわただしく葬儀を終えて、最後のお別れに。 やっぱり、黄色い彼岸花がいっぱい添えられた。 彼岸花は散形花序(さんけいかじょ)。 大きなひとつの花に見えるのは、6個とか8個の花が集まっている。 黄色い彼岸花の花言葉は「追想」。 言われなくても、瞼の奥に懐かしい追憶が蘇ってくる。 おばあちゃんを見送ったあとは、 1人気ままに家の近くを流れる稗田川へ。 こうして散策しながらせせらぎを聴いていると、 おばあちゃんの声が聴こえてくるようだ。 <シーン2/回想シーン〜8歳の秋> ■SE〜稗田川のせせらぎとセミの声 『黄色い花がきれいだら』 私が小さい頃、共働きの両親は忙しく、私の横にはいつもおばあちゃんがいた。 『あれは、彼岸花って言うんだよ』 (※あまり「じゃ」は使いません。「言うんだわ」とか「言うんだよ」) 「ヒガンバナ?」 『ああ、秋のお彼岸に咲くから彼岸花』 「ふうん」 『ピンク〜黄色〜赤。順に咲いていくんだわ』 「わあ!」 『赤いのは曼珠沙華(まんじゅしゃげ)とも言うな』 「マンジュウ・・」 『ははは。ほうだなぁ。でも食べると毒だぞお』 「いやぁ」 『食べんでに目で愛でるんだ。ほれ、黄色い絨毯みたいだら』 「うん。キレイ」 『5,000本もあるんだって』 「すごおい」 『彼岸まで続いとるのかもしれんな』 <シーン3/回想シーン〜14歳の秋> ■SE〜セミの声(クマゼミ) 私が中学生の頃、祖父が亡くなった。 両親は会社員だったが、祖父の家業は農業。 祖母は、半分以上を売却して、小さな畑でいろんな野菜を育てた。 当時の私はアレルギー性の皮膚炎に悩まされていたから 祖母が作るオーガニックの野菜は宝物。 春には新玉ねぎや春キャベツ、冬には里芋が食卓に並んだ。 その中でも、私が一番好きだったのは、地豆。 地豆というのは、落花生のこと。 大好きなのに小さい頃はアレルギーで食べられなかった。 それが嘘のように、おばあちゃんの地豆ならペロっと食べられる。 医食同源。 きっとそうなんだ...
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  • 海が割れた日〜1945年、大災害がちいさな街を襲った・・・
    2025/01/15
    愛知県高浜市を舞台にしたボイスドラマです。 主人公はエイミー25歳。高浜市のケアハウス(軽費老人ホーム)で働く職員。介護福祉士と社会福祉士の資格を持っている。働き始めてから今年で5年目。明るくて元気が取り柄。毎年恒例のケアハウス夏祭りの企画と運営を担当する・・・ ミサトは89歳。ケアハウスに入所して10年。普段から口数は少ない。親しくなった入所者たちはどんどん先に逝き、仲良くなった職員はどんどん転職していなくなっていく・・・(CV:桑木栄美里) 【ストーリー】 <シーン1/ケアハウス出勤> ■SE〜朝のイメージ(小鳥のさえずり) 「おはようございま〜す!」 「ちょっ、みんな、もう起きてんの?」 「新聞配達より早いんじゃない?」 「朝ごはんまで、まだ1時間以上あるんだよー」 「まあゆっくり新聞読んで、くつろいでてー」 「さ、今日もがんばるぞ、私!」 私は、エイミー。 高浜市内のケアハウスで働いている。 あ、ケアハウスっていうのは、高齢者施設のひとつ。 自宅で生活するのが難しい高齢者が 食事や洗濯のサービスを受けながら暮らしているの。 またの名を、経費老人ホームC型。 まずは、昨日の宿直と夜勤から申し送りしてもらってと。 あー、マサヒロさん。夜中にまた7回もコールしたのね。 まあ、でも大事でなくてよかったか〜。 ユウジロウさんは、おもらししちゃったの。 入所したばかりで、緊張してるのかな。 ミサトさんは、37度5分の熱発? 夏風邪かしら。ちょっと心配。 え?はい、所長 なんですか? 「夏祭りの企画〜!? そんなん、もっと適任者にお願いしてくださいよ〜 私、社福士と介福の資格両方持ってるから 相談も聞いて、介助もしなくちゃいけないんですよ」 「今年は入所者・職員全員参加〜?」 「そんな、ご無体なこと言われても〜」 「来年戦後80年だから戦争体験の話?」 「来年80年だったら来年やればいいじゃないですかぁ」 「そうじゃん、いまうちの施設、戦争を体験してる80歳以上の人なんて、 1人しかいませんよぉ」 「じゃあ、みんながその人から聞けばいい?」 「えー、84歳のミサトさん、人前でなんて絶対しゃべれませんよぉ」 「ちょっと。ちょっと所長、どこ行くんですかぁ」 逃げたな。 仕方ない、これも仕事。 朝食介助のときに、ミサトさんに話してみるか。 <シーン2/朝食風景> ■SE〜朝食のガヤ 「話すことなんてないよ」 予想通り。 けんもほろろ。 そりゃそうだ。 普段から口下手で人と話すのが苦手なミサトさん。 こやって言うに決まってんじゃ〜ん。 だけど。 そうも言っていられない。夏祭りは1週間後。 あの手この手できりくずさないと。 「うるさいなあ」 「ほっといてくれ」 やっぱだめか。 「戦争のことなんて覚えとらんて」 お。これは覚えてるときの言い方。 あと一歩。 「10歳のとき?」 よしっ。ヨイショ攻撃全開。 「そりゃ可愛かったさ」 「国民学校の初等科で私より可愛い娘はおらんかったわ」 終戦の年だよな。 「戦争?あんなもんクソじゃ」 「馬鹿が始めた負け戦じゃ」 おお。さすがリベラル。でも、ご家族は? 「ああ、みんな死んだよ」 「おじいさまは南方へ行ったと思ったらすぐに戦死の紙が届いた」 「紙っきれ一枚じゃ」 「とうさまは知覧の特攻隊じゃ」 特攻!それはまた・・・ 「でもな。そんなんわしらの預かり知らぬ遠い世界での話」 「目の前。高浜ではもっとつらいことが起きたんじゃ」 え? 高浜は空襲なんてなかったはずじゃ・・ 「戦争よりもっと辛いことがあった」 戦争より辛いこと? それって・・ 「三河地震じゃ」 三河地震? 知らない。 戦争特集でも全然ニュースにならないし、そんな大きな地震だったの? 朝食の時間が終わる。 ミサトさんの口はまた、貝のように閉じてしまった。 ミサトさんの車椅子を部屋まで押していく。 ベッドへ移乗しようとしたら、このままでいいと言う。 横になると寝てしまうからだそうだ。 ミサトさんは1人用の茶箪笥に置かれた写真立てを眺めている。 セピア色の印画紙には、 小さな女の子とその兄、父母と祖父の5人が並んで写っていた。 ミサトさんの家族かな。 一度丸...
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  • 空と海の平行線〜この景色は海?川?それとも・・・
    2025/01/15
    愛知県高浜市を舞台にしたボイスドラマです。 主人公エミリは16歳の高校1年生。母親の再婚で名古屋から高浜へ。この春から高浜の高校へ入学した。人と付き合うのが好きじゃないので部活もしない予定だったがなぜかボート部に入ることに・・・ 友だちのウミは18歳の高校3年生。高浜生まれ高浜育ち。高浜の中学から系列の高校へ入学した。明るくてリーダータイプ。ボート部のキャプテンだが、部員は4名。なんとか高校最後の年にレガッタ大会に出ようと必死で部員を勧誘するが・・(CV:桑木栄美里) 【ストーリー】 <シーン1/高校の入学式> ■SE〜入学式の雑踏 わぁ、やっぱ入学式ってみんな来るんだー。 あたりまえか。 高浜って田舎だから もっと少人数かなって思ったけど。 名古屋と変わんないなー。 海風が薫る大自然の中の入学式。 って、夢見すぎ? あ、でも、思ってた海じゃない。 これ海?川じゃない? 高浜っていうから、 高台から見下ろす白い砂浜とか想像してたのに・・・ はぁっ(※ため息) ママが再婚して名古屋から高浜へ。 私、1人で名古屋に残りたい、って言ったら 絶対だめだって。 ママだって、コブつきより、 2人っきりで新婚生活楽しんだほうがいいじゃん。 まあ、考えても仕方がない。 これから3年間ここで過ごすんだし。 私なりに田舎生活エンジョイしようっと。(※死語?) ほお〜、クラブの勧誘すごいなぁ。 なるべく目を合わさないようにして・・・ 私、決めてるもん。 高校3年間、帰宅部で通すって。 『ちょっとそこの君』 「はい・・・」 あ、やばっ、反応しちゃった。 『うちの部に、入らない?』 「あー無理です無理です。私体弱いし・・・」 『ならちょうどいいかも。体丈夫になるよー』 「それに家の手伝いもしないと・・・」 『いまなら、入部するとこんな特典もあるんだけどー』 え? おお〜っと。 私の推しの声優の写真が。 しかも直筆サイン入り? 「そそそ、それ、もらえるんですか?」 言ってもうたぁ。 悪魔のささやきにのったらあかんやん・・・ にしても、高校の部活勧誘が、こんなネットショッピングみたいなコトやるかぁ・・・ 『別にいらないなら他の子にあげるからいいけどねー』 「あ、待って」 『うん?』 結局、誘惑に負けてしまった。 推しの写真を両手でかかえながら、家に帰ってからふと思う。 で、何の部活だったっけ? <シーン2/部活初日から大会まで> ■SE〜波の音 「ボート部〜〜〜〜〜〜!?」 ボート部ってなに? 公園とかにあるスワンボートでのんびり過ごす・・・ なワケないよねえ。 えええええええ〜? 手漕ぎボート〜? 無理無理無理無理無理無理無理無理 1ミリも考えてなかった。 ほら、見てよ。 私、こんなに華奢だし、美白のために紫外線禁止令でてるし。 そんな私におかまいなく、キャプテンの3年生、ウミは笑顔で語り出す。 『エミリが入ってくれてよかったわあ』 『今まで私を入れて部員4人しかいなかったの』 『これでやっとナックルフォアのチームが編成できるわ』 ナ、ナ、ナックルフォアってなに〜? 知らなかったけど。 4人1列になって、1人が1本のオールを漕ぐ編成なんだって。 で一番後ろにコックスという操舵手が加わって5人・・・ ちょっと待って。 じゃあ、私もいきなり競技に出るってこと〜!? 『私来年受験だから、今年が最後なんだ』 『市民レガッタには出られないかもって半分あきらめてたから』 『ありがとう、エミリ』 う・・・ なんか、ツボ抑えるの、うまくない? それからの展開は早かった。 だって、市民レガッタ大会まで、たった3か月しかないんだもん。 ボートやオールの持ち方、キャッチ、ドライブ、フィニッシュ・・・ レガッタの基本をゼロから覚える。 毎日のトレーニングは厳しかった。 そりゃそうよね。 いままで堕落した生活でなまりまくった体なんだから。 早朝トレーニングに夕方のランニング。 みんな、私を一番前に走らせるんだけど、すぐにバテて脱落する。 授業前の腹筋なんて、朝ごはん全部戻しそう。 早朝から日が暮れるまでずうっと家にいない私。 ママなんて、娘が気をつかって帰ってこない・・・ って思...
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