エピソード

  • 029.店舗外で研修を受ける=労働時間?
    2022/10/04
    Q:店長です。スタッフに本部主催の育成研修に行ってもらいました。店舗での勤務はしていないので給料を支払わなかったのですが、スタッフから「研修のときの給料が入っていないのでは」と言われました。給料は払わないといけないのでしょうか? A: 仕事に関する外部研修の場合で、スタッフが自主的に受けているものでない限り、店舗内での勤務でなくても給料は発生します。 こんくり株式会社 https://con-cre.co.jp/ MANA-formation https://community.camp-fire.jp/projects/view/409762 <解説> コンビニエンスストアで勤務する店長やスタッフが研修を受ける場合、というと、その多くは本部主催のものが中心になるでしょうか。例えば、本部がスタッフ育成の一環として店舗に提供している店内資格の取得を目的とした研修(店長研修やスタッフの資格など)を用意しているチェーンもありますし、最近では、接客力向上研修や管理者を対象とした労務管理のセミナーも増えてきています。その他、国家資格や民間資格取得のための講座、スキルアップのために外部機関の行う研修やセミナーの受講を推奨しているところもあるでしょう。さらには社内研修も行っている店舗(会社)もあるかと思いますが、こうした研修受講が給料支給の対象になるのかどうか、というのが今回のテーマです。 そもそも、給料が発生する条件は、使用者(店舗の責任者)の指揮命令下を受けて、労働者(スタッフ)が労働を提供すること。これは、店舗での勤務はもちろん、店舗外においても同じです。店舗の外で受ける研修が「労働」にあたるかどうかが、判断材料となります。いくつかの事例をもとに確認してみましょう。 【研修の事例と労働時間の関係】 ①参加の義務が特にない、店舗側でも強制ではない本部研修 スタッフ側から「自分の勉強のために行きたい」と自主的に申告があり参加する場合は、すぐに労働時間(給与の支給対象)とはならず、各店舗の判断に委ねられます。もちろん、労働時間として給与を出しても構いません。 本部研修に限らず、その他の外部機関での研修、セミナーなども同様です。 ②店内資格を取得するために受けに行く本部主催の研修 これは、「店内資格取得」そのものが仕事(役割や業務内容、あるいは給与)に直結する研修であり、店長やオーナーから「受けてきてね」などの明確な指示で受ける場合は、確実に労働時間となります。ただ、強制力は一見なくても、その資格を取らないとスタッフが店舗で不利益を被る(減給の対象となる、昇給しない、受けないことを理由に極度に業務内容を制限される、など)ような場合は、強制力が働いているのと同じです。この場合は、同じように労働時間となり、給与支払いの対象となります。(場合によっては、こうした「見えない強制」がトラブルのもとになりますので、対応も注意が必要です。) 逆に、その店内資格の取得がスタッフや店舗にとってある程度自由度の高いものであり、「この資格を取っておくと有利に働くな」という理由で受講をする場合は、すぐに労働時間とはなりません。 ③所属企業内で行われる研修 店舗外で行われる自社主催のイベントや研修などがこのケースにあたります。複数店舗経営の企業では「店長会議」などの名称で、取り組み報告と勉強会を兼ねることもあるようです。この場合も、強制的に参加となる場合は、給与が発生します。例えば「店長は強制参加、その他スタッフも自由に参加OK」となっていて、スタッフが自分の意思で参加をする場合は、その部分に限りただちに労働時間とは判断されません。 まとめますと、その研修が「自由参加になっている」ということ、また、「受けないことによって対象者が不利にならない」の二つの要件を満たしている場合には、給与支給の対象とはなりませんが、それ以外の場合は労働時間となり、給与支給の対象となります。 【給与支給のポイント】 もし、その研修が労働時間となり給与の支払いをする対象となる場合、どのように計算すればいいのでしょうか。時給者の場合は、その日に受けた研修時間を申告してもらい、時給×...
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  • 028.1分単位の労働時間管理の実務は?
    2022/09/27
    Q:オーナーです。最近、本部からの話もあり、1分単位の労働時間計算に切り替えました。ですが、出退勤時のスタッフの一挙手一投足が気になります…。実際には、どのように運用すれば良いのでしょうか…。 A:できる限り誤差を縮めるために、店舗内で勤怠登録(出勤・退勤などのスキャン)や残業のルールを作りましょう。 ただし、作るだけでなく、運用ができるように、開始当初はスタッフをフォローすることも重要です。 こんくり株式会社 https://con-cre.co.jp/ MANA-formation https://community.camp-fire.jp/projects/view/409762 <解説> 15分。30分。まず、よく聞くのはこの2つでしょうか…。これらはすべて労働時間管理の単位です。例えば、9時から17時のシフトで、17時14分まで働いた場合、15分単位の労働時間管理だと、17時に修正をする方もいるのではないでしょうか。かくいう私も店舗勤務時代は疑問視することもなく、14分を帳消しにしていました。ですが、これは正確にはダメな労務管理です。なぜかというと、このやり方は14分の勤務時間分の給与が未払いとなってしまうからです。いわゆる、労働基準法という法律の違反行為となってしまうのです。 こうしたことから、現在は店舗での独自判断、あるいは本部からのアドバイスをきっかけに、労働時間管理の設定を1分単位に切り替えた店舗が増えていると聞きます。ですが、この1分単位の労働時間管理、「運用はすごく難しい」と感じているオーナー・店長も多いのではないでしょうか…。 【なぜ難しいと感じるのか】 オーナー・店長からよく聞く声としては、「実際の運用方法がわからない」「仕事を終えて、勤務終了の勤怠登録前に、10分以上スタッフ同士で話をしている光景を見かける。おしゃべりに給料を払うのだと思うと気が気じゃない」などというものがあります。確かに、早く出勤して忘れないよう先に勤怠登録し、そのあとスマホを触っているとか、勤務が終わったあともダラダラ話し込んでいる行為に対して、給与を支払うのは釈然としませんよね…。1分単位の労働時間管理だと、登録された時間そのままに給与確定の処理をすることで、すべて給与に反映されてしまうのですから、これはなんとか対策を立てたいところ。では、実際にどのように対応すれば良いのでしょうか。 【店舗内で勤怠登録に関するルールを作ろう!】 ①全体的な運用方法 大きくは2つに分けられます。一つは「スタッフによって登録された勤怠をすべてそのまま給与に反映させる」、もう一つは「一定のルールを設けて、そのルールから外れるものについては本人に確認のうえ勤怠修正を行う」です。ただ、一つ目の方法はやはり先述の通り、仕事しなくても給与を得られる手段とスタッフに捉えられてしまう可能性があるため、二つ目が一般的ではないかと思います。具体的にどこでルールを設ければいいのかを次に見ていきます。 ②勤怠登録のタイミング ある店舗では登録時間の誤差をできる限り解消するために、出勤した場合は勤務開始の2分前、勤務終了後も2分以内にそれぞれ勤怠登録する、とルール化、明文化しているところがあります。この「2分」部分は、もちろん店舗により幅がありますが、勤務開始/終了時刻からは大きく外れないように、最大でも5分前、5分以内にとどめておいたほうが良いでしょう。 ③早出、残業、小休憩の判断方法 コンビニエンスストア店舗では難しい部分もありますが、早出や残業、小休憩(取る場合)をなんらかの方法でスタッフに申告させることを常態化することをお勧めします。具体的には、早出・残業・小休憩の申請書フォーマットを作り、必ずその日帰るまでに書く、ということをルール化します。特に意味のある早出・残業をし、成果につなげてもらうことを前提に考えるのであれば、ノー申告制はアウトです。申告のタイミングも、理想は事前ですが、責任者が24時間365日いるとは限らないため、給与締め日までであれば、事後でもOKとしても良いでしょう。この方法によらない早出や残業、小休憩は、「店舗が早出・残業ではないと確定した」場合に限り、給与へ反映させない...
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  • 027.LINEで退職連絡!これは有効?
    2022/09/06
    Q:店長です。最近、遅刻や欠勤、中には退職の連絡をLINEで送ってくるスタッフが多く、最初は注意していたのですが、あまりにも件数が多いので店舗スタッフ連絡用のLINEを作って運用しています。しかし、LINEでの退職連絡は有効なのでしょうか…。 A:LINE連絡はルールを作って運用しないと店長が大変になります。また、LINEでの退職連絡も、店長に意思が伝わった時点で有効となります。しかし、必ず一度店舗に来てもらって退職の手続きをとるなど、その後の流れが非常に重要となります。 こんくり株式会社 https://con-cre.co.jp/ MANA-formation https://community.camp-fire.jp/projects/view/409762 <解説> LINEやTwitter、FacebookでのSNSコミュニケーション(以下、「LINE」にまとめる)経験者が多い現代、プライベートはもちろん、仕事の場にも及んでいるのは周知の事実です。一定のルール下で運用するのであれば有効なツールとなりえますが、一方的であるうえ、顔を突き合わせない分、放った言葉の真意が伝わりにくい点が課題です。 なかには過激な発言、誤解を招く発言によるスタッフ間トラブルが発生したり、遅刻や欠勤、退職の連絡をLINEで送ってくるスタッフがいたり…と、近年は店舗責任者の多くが「LINEの運用に悩んでいる」と嘆いています。今回はその中でも、遅刻や欠勤の連絡をLINEですることの問題点と対策、退職連絡の有効性について見ていきます。 【LINE連絡の問題点と対策とは?】 「すいません、遅刻します」「休みます」。 そのスタッフが出勤する直前に、突然LINEでこのような言葉を受け取った経験がある方もいらっしゃると思います。このLINE連絡の問題点はどこにあるのでしょうか。問題だな、と感じる部分は人によってそれぞれかもしれませんが、私が認識するLINE連絡の問題点を3つ挙げます。 ①遅刻、欠勤理由が書かれていない どのような理由で遅刻するのか、休むのかが、これではまったく伝わってきません。「理由は何?」とLINEで毎回聞くのも店長としては辛いところですね。 ②感情が伝わってこない 文字だけがポン!と届くため、そのスタッフの感情や状況が瞬時に理解できません。責任者としては、寝坊なのかすぐに解決し得ない重大な理由によるものなのかで、今後取るべき対策が変わってきますが、もう少し状況を聞き出さないと対策の取りようがありません。それ以上に、簡単に送ってこられているように見えるLINEでのメッセージに、店長は「遅刻や欠勤を軽く考えているのでは」と解釈しがちです。 ③見ていない可能性がある 店長やスタッフがリアルタイムでキャッチできればまだしも、LINEは一方的な連絡ツールなので、勤務開始時刻を過ぎて確認することになる場合も考えられます。 まとめると、LINEは文字こそ届きますが、それだけではスタッフの本当の状況がわからないため、店長は電話や対面など、直接会話する以上にこまめなコミュニケーションを要求されることになります。 【うまく運用するにはルールを設けよう!】 LINEでの連絡はダメ!ということであれば、LINEでの連絡を禁止、徹底することが必要ですが、これだけSNSコミュニケーションが当たり前の時代となると、ある程度は容認の姿勢をとって行くことで人間関係の構築・維持がはかりやすくなるようにも思われます。もし、LINE連絡を有効とする場合には、一定のルールを設けて運用したほうが良いでしょう。 ①遅刻・欠勤の連絡は理由をつけて、緊急時は電話で 理由があるからこそ、店長も納得して理解を示せるもの。また、就業規則や就業ルールなどでも見られる「理由なき遅刻・欠勤は無断遅刻・無断欠勤とし、処罰の対象となる」を、ここでも有効に活用しましょう。それに加えて、数分で「既読」にならない場合や緊急時には電話で連絡をしてもらうよう取り決めます。 ②気持ちを込めてもらう ?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、文字だけのやりとりでも、気持ちを込めることはある程度可能です。顔文字や絵文字を使ってください、という意図ではありません。遅刻することや休むことは、どのような理由があったとしても、店舗に影響を与...
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  • 026.○○手当は残業代計算の基礎に入りますか?
    2022/08/16
    Q:オーナーです。店長には店舗運営を任せているということで「店長手当」を基本給とは別に毎月つけています。モチベーションを上げて頑張ってもらいたいのと、残業代をあまり多くは払えないので、手当で調整をしているのですが、店長から「残業代をちゃんと払ってください!」と言われました。どこがダメなのでしょうか? A:業務遂行の対価として払う手当の額は、基本給とあわせて残業代を計算するときの基礎となります。基本給とわけて「◯◯手当」を作っても、残業計算時に除くことはできないため、注意しましょう。 こんくり株式会社 https://con-cre.co.jp/ MANA-formation https://community.camp-fire.jp/projects/view/409762 <解説> 「◯◯手当」は、基本的に一定の条件を満たしたスタッフに支給するものです。例えば、Qのような「店長手当」。マネージャーや責任ある立場に就くと「マネージャー手当」「役職手当」など、名称はさまざまですが、一定の手当をつけるところが多いようです。また、アルバイトスタッフに対して、たとえば発注担当者には「発注手当」をつけるところもあります。 あとは、年末年始に勤務したスタッフに対する「年末年始手当」など。中には、一定の条件において借家で生活するスタッフへ支給する「住宅手当」や扶養する家族がいるスタッフに対する「家族手当」など、業務には直接関係はないものの、手当の支給対象にしているところもあるようです。 これらの支払い方法は、月給の人であれば、まとまった数千円〜数万円単位の手当になりますし、時給であれば、基本時給に上乗せをする形で計算をすることが多いです。こうした手当をつけることによって、スタッフが「責任ある仕事を任せてもらえて、かつ給料も上乗せでもらえる」と、仕事や家庭でのモチベーションアップにつながり、さらに成長していくきっかけとなるため、手当は有効に使うと良い影響があります。しかしその反面、多用すると管理する側が大変になってきます。その最たるものが、「残業代の計算」です。 【業務関連の手当は基本給と同じ?!】 それでは、手当を設定する際の注意点を見ていきましょう。 ①手当を増やしすぎないよう注意 どういう条件のもとにつける手当なのか、を整理して有効に活用できる程度の種類にとどめましょう。「発注手当」(発注担当者に対して)、「育成手当」(スタッフ育成担当者に対して)など、特定の業務に対して設定する場合は、本当に別途手当をつけるべき業務なのか、をしっかり考えて実行に移すようにします。たとえば、「レジ手当」「納品手当」「トイレ清掃手当」「油交換手当」など、各業務で手当があったらどうでしょうか…。それ自体が悪いことではもちろんないですが、煩雑になりますよね。 また、社員に多い「店長手当」「役職手当」は、役割でまるっと設定できるので便利だ!と考えるオーナーも多いですが、これもなんとなく設定してしまうのは禁物。例えば店長手当の場合、何が店長業務なのかを明確にしないまま手当をつけると、スタッフと同じ仕事しかできない(店舗の数値管理、人員管理ができない)店長がいても同じ手当を支払うことになり、支給する本来の意味が薄れてしまうでしょう。 ②残業代の計算に入れるものと入れないものがある 残業代。オーナーや経営層の方からすると、できれば最小限にとどめたいものですよね。今回のQの回答部分ですが、基本給(基本時給)に乗せる「◯◯手当」が“業務に対する対価”である場合、基本給と合計して、残業代の計算の基礎としなければなりません。 時給の例でいくと、時給1,000円のスタッフに、発注手当が100円ついたとします。この場合は、1,100円が残業代の計算の基礎となる、ということです。残業代は法律上1.25倍で計算することになりますので、1,100円×1.25=1,375円が、残業時の時給となります。残業代計算においては、俗っぽい言い方をすると「◯◯手当は基本給と同じ扱い」なのです。 また、たまに見かけるのですが、「インセンティブ」制度を導入している店舗があります。たとえば店長であれば、月の売上目標や利益目標を...
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  • 025.36協定、出してますか?
    2022/08/02
    Q: 店長です。最近、労働基準監督署の調査があり、36協定が出ていないので出してください、と言われました。36協定とは何か、出さないと何がダメなのか、教えてください。 A: 36協定とは、残業や休日出勤を行うために必要な届け出の通称です。これを出さないで残業などをスタッフにさせていると違法となり、罰則が科せられることがあります。 こんくり株式会社 https://con-cre.co.jp/ MANA-formation https://community.camp-fire.jp/projects/view/409762 <解説> ニュースでも大きく取り上げられるようになってきた、「違法残業」の問題。「うちは小さいし大丈夫だろう」「自分は関係ない…」なんて思っていませんか?もしかしたら、知らないうちに違法残業を行っているかもしれませんよ?…と最初から脅すような言葉を言ってしまいましたが、これは脅しでもなんでもなく、本当のことなのです。 冒頭のQで出てきた「36協定」。読みは「サブロク協定」と言います。これは労働基準法第36条の内容から来ている通称で、本当の名称は、「時間外・休日労働に関する協定届」です。その名の通り、時間外(早出や残業:以下「残業」)と休日出勤を行う場合には作成し、店舗のある地域の労働基準監督署に出す書類です。協定とあるのは、店舗側(使用者)と働くスタッフ(労働者)の間で協議して決める、という意味合いです。 まったく残業も休日出勤もないよ!という場合は出さなくても良いのですが、24時間営業、しかも何が起こるかわからない店舗での業務において、残業や休日出勤は一般的に避けて通れないもの。最近では1分単位での勤務時間計算も強く言われていることもあって、出しておくに越したことはありません。 法律で決まった労働時間は、1日8時間、1週40時間。および週1回の休日の原則を設けることが義務付けられています。それを超えて働くためにはこの36協定の作成と届出が必須です。たった1枚の紙ですが、その意味合いはとても重要なものとなっています。そのポイントは4つです。 ① 店舗ごとに出す必要がある この協定の効果が及ぶ範囲は一つの店舗のみです。そのため、複数店経営をされているところは、各店舗で出しているかの確認も必要です。本社機能が店舗と別にある場合は、本社分も届け出ることになります。 ② 残業時間の限度時間に注意 では、この協定届を労働基準監督署に出せば、際限なく残業などが出来るのか?その答えは「NO」です。協定に書かれた1日、1か月、1年間の残業時間、および休日労働の日数を超えて残業したり休日出勤をしたりした場合は、違法とみなされます。 ちなみに、1か月、1年間など、一定期間内で設定可能な残業時間には上限があります。例えば、「1ヶ月であれば45時間まで、1年間であれば360時間」と決められているのです。そのため、それらを超えた設定は原則できません。休日出勤についてもスタッフがしっかりと休める範囲内で、具体的に決めておく必要があります。 ③ どうしてもその上限を超えてしまう場合は… とはいえ、人の採用、定着化が難しい現在、1人のスタッフにかかる負荷が大きくなりがちです。そうなると、先に決めた時間以上の残業が発生してしまうこともあるでしょう。私の関与している店舗でも、月に60時間に達してしまう方がいらっしゃいます。こんなときの例外があります。それは、「特別条項」です。 特別条項とは、「臨時的に、限度時間を超えて時間外労働を行わなければならない特別の事情が予想される場合には、従来の限度時間を超える一定の時間を延長時間とすることができる」ものです。つまり、月45時間が通常の設定だとして、どうしても超えてしまう事情がある場合は月60時間まで残業ができる、などの取り決めを行うことができるのです。しかし、あくまで「特別の事情」であるため、その事情が発生するのは1年の半分を超えないこととされており、恒常的に月45時間や年360時間を超える状態が続く場合は特別な事情としてみなされません。なかなか人が集まらない!という店舗にとっては、苦しい部分ですが…。 ④ 一度届け出たら“永遠に有効”ではない 「...
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  • 024.無期雇用契約への転換?!
    2022/07/19
    Q: 店長です。インターネットを見ていたときに「無期転換」というキーワードが気になったので調べてみたら、アルバイトの契約がちょっと変わるかもしれない、ということですよね…これについて聞かれたら、どう答えればいいでしょうか? A: 皆さんの店舗で最も長く働いているスタッフは何年でしょうか。そして、その方の雇用契約は、正社員でしょうか?アルバイトでしょうか? 「有期契約労働者」、つまりアルバイトやパート、契約社員など、呼び方はさまざまですが、1年や半年など、期間の定めがある雇用契約に基づいて働く人を総称してこう呼びます。コンビニエンスストアではたくさんのスタッフが働いていますが、そのほとんどが有期契約労働者となります。 これらの方の「無期雇用転換ルール」という制度が少しずつ、本格的に始まっているのです…。 こんくり株式会社 https://con-cre.co.jp/ MANA-formation https://community.camp-fire.jp/projects/view/409762   少しだけ、法律の話をします。平成25年4月1日に、労働契約法という法律が改正され、今回の無期転換ルールができました。この日以降に一定の条件を満たしたスタッフには「無期転換申込」の権利が得られ、その後「無期転換したい」と言って来た場合には、期間の定めのない雇用契約を結び直さなければなりません。 この狙いは、「長く働いてくれているスタッフの安定した雇用/勤務の実現」。スタッフ側からすると、1年間や半年で契約が終わってしまうかもしれない…という不安から解消され、店舗にとっては、安定的に戦力として活躍してくれるスタッフがいる安心感も得られますよ、というものです。 皆さんの店舗では、もしかしたらすでに無期転換と同じような状況にあるスタッフもいるかもしれません。それはもちろんいいことでもありますが、逆に、雇用契約がなあなあになってしまっているところは要注意です。中には、最初だけ1年とか半年の契約を結んで、その後契約更新をすべきところまったくなされていない店舗も見かけますが、これは、実質無期雇用契約と同じ状態とみなされることもあります。その状態で何かスタッフとトラブルになって「うちは1年契約だから、もう今回で更新はしない!」と言っても、その契約は何の効力も持たなくなってしまうでしょう。 【無期雇用転換ルールの3要件】 では、この無期雇用転換ルールの条件を見ていきます。次の要件をすべて満たしたスタッフは「無期転換申込」の権利が得られることになります。 ① 有期雇用契約の通算期間が5年を超えている まず定義をお話しすると、「同一の使用者との間で締結された2以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間が5年を超えていること」が要件となります。例えば、多くの店舗では雇用契約を1年間で結んでいるかと思いますが、その場合は、5回の契約更新が終わったタイミングと同時に、「無期転換申込権」が発生することになります。 もし、1年を超える場合、例えば3年間の雇用契約を結んだ場合には、次も3年で更新をした際通算6年となるので、4年目で「無期転換申込権」が発生することになります。 ② 契約の更新回数が1回以上 平成25年以降で雇用の更新が1回以上行われているかどうか、ということです。これは、比較的わかりやすいかと思います。コンビニエンスストアスタッフの契約については、最高でも3年と法律で決められています。契約の通算期間が5年を超えるという①の条件を踏まえたときに、3年ごとの契約であれば、更新回数は一番少なくて1回になる、というのがその理由です。契約が1年の場合は、5回契約を更新していることになります。 ③ 現時点で同一の雇用主との間で契約している これが最後の条件ですが、通算5年を超えて契約をしてきた使用者(店舗)との間で、現在も雇用契約を結んでおり、かつそれが当然ながら有期雇用契約である、というものです。 以上、この3つが揃っているスタッフから「無期雇用契約に転換したい」と言われたら、5年を超えた次の契約更新の段階で無期雇用契約へ転換をしなければなりません。 【無期雇用契約に転換すると何が変...
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  • 023.固定残業代導入の注意点とは?
    2022/07/12
    Q:店長です。現在勤務している社員スタッフの残業管理の一環として、一定時間の残業代を加味した固定給を払いたいと思っています。この場合の注意点について教えてください。 A:いわゆる「固定残業代」制度は、何時間分でいくらの残業代を加味するのかをスタッフに明示すること、適切に勤務時間を管理し、設定した時間を超えた残業については残業代を別途支払う必要があります。 こんくり株式会社 https://con-cre.co.jp/ MANA-formation https://community.camp-fire.jp/projects/view/409762   <解説> 政府が推し進める「働き方改革」の一環として、適法でない残業に対する見方が厳しくなっています。それと並行して、「残業代未払い」の問題が後を絶ちません。意図の有無にかかわらず、残業代が適切に支払われていないことによるトラブルです。 コンビニエンスストアの場合、ストコンの給与システムを使用していて時間給で勤務をしているスタッフについては、1日8時間、週40時間を超えた場合に残業代が自動計算される仕組みです。しかし、社員など固定給設定のスタッフについてはその仕組みがカバーしきれていない現状があります。そのため、予備知識がないと、本当は残業しているのに計算がされず、結果、残業代が支払われなかった…ということが起こってしまうのです。 そうした中で、一定時間までの残業を「固定残業代」という形でカバーし、その残業が発生する・しないにかかわらず一定額を支払う、という手法が増えてきています。私も社会保険労務士としてアドバイスをすることがありますが、これを正しく行うこと自体は違法ではないとされています。ただし、やり方を間違えると、違法になるだけでなくトラブルに発展する可能性もあります。今回は残業の概念と固定残業代の設定、運用方法のポイントを見ていきます。   【残業とは】 まず、残業という言葉がよく使われますが、正式には「時間外労働」と言われます。決められた勤務時間よりも早く働き始める、あるいは就業時刻を超えて働くこと、どちらも時間外労働です。コンビニエンスストアは24時間営業の店舗も多いので、どちらも発生する可能性があります。 では、時間外労働はすべて1.25倍以上の給料になるのか、というと、必ずしもそうとは言えません。通常であれば1日8時間、1週40時間を超えた場合に1.25倍で計算します。また、変形労働時間制という特殊な労働時間管理を行う場合はあらかじめ決められたシフトの勤務時間で働いて週で40時間を超えた場合に1.25倍となります。この時に固定給対象者の場合は時給単価に直して、その1.25倍を計算することになります。   【固定残業代の設定】 ただ、コンビニエンスストアは本部より1分単位の勤務時間計算を推奨されていることもあって、1分超えた場合の計算は非常に大変です。こと、固定給を支払う場合には、1時間の時給単価に換算し、かつ1分単位で計算を行うので、専門家を頼らないと対応できないケースもあります。そうしたときに固定残業代制度を導入することで、残業が一定の時間に達するまで細かい計算をする必要がなくなります。この手法は、一定時間の残業がほぼ毎月の単位で発生しているような働き方をしているスタッフがいるところではとても有効です。 ただ、気をつけたいことがあります。それは、一定の時間が何時間で、それに価する残業代がいくらなのかを事前に決めて、スタッフへ周知をはかり、かつ雇用契約書(労働条件通知書)などにも明記しておかなければ、それ自体が無効になってしまうことです。仮に、月の所定労働時間が174時間の場合、「基本給 190,000円 固定残業代(30時間)41,000円」というように、時間数と残業代を明記し、スタッフ本人に知らせる必要があります。当然ながら一定時間を超えて残業した場合には、通常の残業代計算が必要になりますので、毎回決めた時間を超えて働くスタッフが多い場合は、あまり意味を持ちません。   【固定で払えば何時間に設定してもいいの?】 これは、月であれば通常「45時間」が上限です。もちろん、36協定(時間外、休日出勤を行えるようにする協定)...
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  • 022.スタッフの「ニオイ」問題、どう対応する?
    2022/06/28
    Q:店長です。タバコや体臭が強いスタッフがいます。このまま暑くなってしまうと、他のスタッフだけでなくお客様からもクレームになるのでは…と心配です。どうしたらいいでしょうか。 A: 店舗全体で指摘できる環境づくりをした上で、個別にアナウンスしましょう。 こんくり株式会社 https://con-cre.co.jp/ MANA-formation https://community.camp-fire.jp/projects/view/409762 <解説> 接客業に携わるとき、必ず守るように言われるのが身だしなみ。そのうちの一つに「ニオイ」に関するものがあります。例えば香水、口臭や体臭、タバコのニオイなど、食品を扱う者として相応しくないニオイに注意しましょう、という話は、一度は聞かれていることと思います。 最近ではセクハラやパワハラに続いて「スメルハラスメント」という言葉が聞かれるようになってきました。柔軟剤の過度なニオイが気になる、という人も出てきているようです。寒い時期にはそれほど気にならなかったニオイも、夏に突入するにつれて目立ってきてしまうため、早めに対策を取っていかなければなりません。店舗のスタッフ管理の一環として取り組む場合、どのような対応をしていくとよいかを見ていきます。 【放置するとどういう影響があるか】 まず、こうしたニオイの問題を、店舗側が放置するとどのような影響があるでしょうか。まず職場環境の面では、スタッフ間の人間関係に少なからず影響が出るでしょう。「言いたいけど言えない」状態、つまりコミュニケーションをうまく取れないことから、チームとしての統制がはかれなくなっていきます。こうした状態が続くと、最終的には店舗環境の維持、売上や利益にも影響が及ぶ可能性があります。 また、労働契約上、こうした職場環境調整義務やスタッフの安全配慮義務などが店舗側には課せられることから、仮にニオイの問題を放置し、雇用しているスタッフに何らかの健康被害など損害が発生したとき、店舗側が責任をとらなければならないことも想定されます。ここまで大きな影響はなかなかないかもしれませんが、常にリスクと対策は考えて対処したほうが良いでしょう。 それでは、具体的にどうすればいいのでしょうか。 【共通ルールにあっても改めてアナウンスを】 身だしなみのルールが各チェーンであるかと思いますが、仕事に慣れてくると意識が薄れがちです。中でも、ニオイについては自分では気付かないことも多く、気がつけば周りが迷惑していた…ということもあります。店長は梅雨の時期に入るタイミングで、スタッフ全員に店舗独自の注意喚起を行っていきましょう。 事務所に張り紙を行う、連絡ノートに記載する、朝礼で伝えるといった方法を活用するのはもちろん、具体的なアクションに起こしていきます。例えば、梅雨入り前から夏場にかけてはセルフチェックだけでなく、クロスチェック(2人以上での確認)で身だしなみを強化する。休憩を取った場合は歯磨きを可能な限り推奨する(洗面台が店内トイレ以外にないケースも多いため、難しいこともありますが…)。あるいは就業規則の「服務規程」部分や店内ルールに明記して「気づいた点があれば店長に言ってね」とアナウンスを行うことも必要でしょう。香水をつけることについての影響、汗のケアやタバコを吸ったあとのケアなど、具体的に書いておくことが第一歩になります。 【体臭の強い人にどう説明するのか】 それでは、もしタバコのニオイや体臭が強く感じられるスタッフがいた場合はどうすればいいでしょうか。まず、タバコの場合は喫煙後のケアを促すことが重要です。私の知っている店舗では、店長であってもタバコのニオイが残っているときに「店長、タバコ臭いよ」とスタッフから指摘をする文化があります。店長も指摘を受けてムッとするのではなく、「あ、残ってた?ごめんごめん!」と素直に受け入れ、対応しています。あまりシリアスに伝えるよりは、比較的ストレートかつ軽快な伝え方が効果を発しやすいようです。 次に体臭ですが、タバコのニオイに比べて伝えづらいでしょう。しかし、冒頭にも述べた通り自分では気付...
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